和方養生技術伝承塾~鍼灸・操体実践講座~ 急性期から慢性期まで患者さんが喜ぶ技術を伝承します

術伝流操体no.6

はじめに †
 ここ2回は、肩のつらさを軽くする操体と、肩の可動域制限を解消する操体を紹介
してきました。今回は、古く重い五十肩などで、脇の下まわりにシコりができてい
る場合の操体について説明していきます。五十肩や肩こりも古く重くなると、脇の
下や上腕の手のひら側、そして、脇の下と胸の間、脇の下と背の間、この2カ所に水
かき状に張っている筋肉の中もしこりができていることが多くなります。そういう
場合には、先にそういう脇の下まわりのシコりを緩めると、首や肩のしこりが緩み
やすく、また、可動域制限も解消されやすくなります。特に、腕が30度ぐらいまで
しか上がらないときは、脇の下や上腕の手の平側にツボが出ていることが多く、そ
の部分がしこりになって伸ばそうとしても伸びないので、腕が少ししか上げられな
くなるようです。


脇の下に皮膚の操体をしながら指揉み
 さて、今回紹介する操体の1つ目は、脇の下から上腕の手の平側に出ているツボに
皮膚操体することをきっかけにしながら、経絡的に関連する指の指揉みや体重移動
などを加えるというものです。


脇の下から上腕の手の平側に出ているツボを探す †
 ラクな姿勢で座って腕をつらくない範囲で横に上げてもらい、脇の下から上腕の
手の平側をよく見て、溝状に凹んでいるところがないか探します(写真1)。
画像の説明写真1
つらい一歩手前まで上げると見つけやすいです。脇の下に続く上腕の溝は、やや前
方に挙上制限がある場合には親指側に、やや後方よりに挙上制限がある場合には小
指側に出ることが多いですが、溝が斜めに走っている場合も多いです。これは、そ
の挙上制限の時に使う筋肉が斜めに走っているからです。

 見つけた溝を脇の下の方に辿っていき、終点を肩の方(座位で上の方向)に押し
つけると圧痛があります。そこから、溝を戻りながら、その溝の中でも凹んでいる
場所を押してみると圧痛のある場所がほかにもいくつか見つかると思います。その
中でも圧痛の一番強いところを選びます。


選んだツボの上の皮膚をズラす †
 選んだところを押していた圧を少し緩め、皮膚を筋肉方向に軽く張った状態程度、
言い換えれば温度を測るような感じにします。そして、指腹がその部分の皮膚にピッ
タリ張りついたような感じにしてから、その部分の皮膚をあちこちズラしてみて、
一番大きくズレる方向を探します。

 ズラし方は、

(1)溝と平行の2方向、脇の下方向と肘方向
(2)溝と垂直の2方向、親指側方向と小指側方向
(3)(1)と(2)の組み合わせ
(4)捻転の2方向、時計回りと反時計回り
(5)(3)と(4)の組み合わせ

という感じで試してみます。

 脇の下から上腕・手の平側の溝の中のツボの場合には、溝と平行で脇の下方向が
一番ズレやすいことが多いようです。それに捻転の2方向のどちらかを加えるとイイ
感じになる確率が高いように思います。受け手の方が言葉の通じる人なら、イイ感
じがするか確認してみます。

 ズラしやすい方向、イイ感じの方向が見つかったら、その方向に皮膚をズラした
ままの状態をしばらく続けます(写真2)。
画像の説明写真2


いろいろ付け足してイイ感じを増やす †
 そして、イイ感じが増えていくようにいろいろ付け足しをしてみます。この場
合には、たとえば、指を揉んだり反らしたりしてみます(写真3)。
画像の説明写真3
反らしてピリピリビリビリする感じの強い指がよいことが多いです。溝が、親指側の
ときには親指や人差し指、小指側のときには小指や薬指を反らすとビリビリする感じ
が強いことが多くなります。経絡的に関係しているからだと思います。指揉みを加え
るときには、指裏関節部の皺の横端の部分を揉むと効果が出やすいです(写真4)。
画像の説明写真4

 体重を移しやすい方に移してもらいます。前にも書いたと思いますが、体重を移
すと、下半身も動くので、下半身も含めた体まるごとのイイ感じが味わえ、体全体
の調整ができます。また、体重を移すという動作はあまり長い時間続けられないの
で、1つの操体が短い時間で済むというのもよい点です。

 また、首や反対側の手など受け手の方が自分で動かせるところをゆっくり動かし
てイイ感じを探してもらうのもよいと思います。


お腹に息が入ったか、イイ感じか確かめる †
 受け手の人のお腹に息が深く入っていくか確かめるようにしてください。言葉が
通じる人には、イイ感じが続いているなら続ける、イイ感じがしなくなったら終わ
りにしてもよいと伝えておくのもよいと思います。


姿勢を変えたくなったら終える †
 体重を元に戻したくなるなど、大きく姿勢を変えたくなったら終わりにします。
受け手の人がイイ感じを感じられなくなったら終えてもよいと思います。

 ツボを調べ圧痛が変化したか調べます。可動域制限があった場合には、可動域が
改善したかも調べてみます。そして、その溝の中の他の場所も調べ、押して圧痛が
あるツボが出ていないか調べ、あれば、また、そのツボの上の皮膚をズラすことを
きっかけにする操体をしてみます。ただし、圧痛が軽い場合には、そこをきっかけ
にする操体は省いて次の操体に行ってもよいと思います。


脇の下の水掻きのしこりを摘んで、痛みから逃げる †
 今回の2つ目は、脇の下の前後の水掻き、つまり、上腕親指側の脇の下よりから胸
の間に張っている筋肉と、上腕小指側の脇の下よりから背の間に張っている筋肉の
中のしこりを摘んで、そのしこりを痛くない方に動かしてみることをきっかけに、
手首捻転や体重移動などを付け加える操体です。


脇の下の胸側の水掻きを摘むことをきっかけに †
 まずは、胸側の水掻きを摘んでしこりを探してみましょう。


しこりを探す †
ラクな姿勢で座ってもらい、脇の下と胸の間の水掻き状に張っている筋肉を摘んで
みます。腕をつらくない範囲で横に上げてもらうと探しやすいです。軽く摘むとく
すぐったいこともあるので、しっかりつまんで探しましょう。2つ3つ見つかったら
一番痛いか嫌な感じのものを選びます。


しこりを痛くない方に動かす †
 そのしこりを肩の方に動かします(写真5)。
画像の説明写真5
一般的には、イイ感じの方向、痛みが減る方向に動かすのですが、この場合には、
肩の方に動かすと痛みが減る可能性が一番高いです。


イイ感じを増やす †
 まずは、手首捻転を付け加えます。しこりと同じ側の手首を2方向に捻ってイイ感
じの方を探します。この場合には、ほとんど小指側を手の平側に回す方がよいと思
います。そのまま、その方向に手首を捻っていくと、肘が曲がり、手首が胸に近づ
くと思います(写真6、7)。
画像の説明写真6
画像の説明写真7
 そうすると、摘んでいたしこりの周りの筋肉が膨らんできて、しこりが膨らんで
きた筋肉に埋もれるような感じで消えていき、それと同時に痛みが減っていくと思
います。受け手の人が言葉の通じる人なら聞いて確認してみてください。

 操体の自然則として、基本的に、しこりのある筋肉を縮める方向に動かして、し
こりが縮んで膨らんできた筋肉に埋もれるようにする、つまり、しこりは筋肉が縮
んだまま伸びなくなった状態なので、そのしこりよりも周りの筋肉が少し余分に縮
んだ状態の格好をしばらく続けていると、しこりは緩みます。

 イイ感じを付け足すことに戻ります。あと2つ付け足せます。体重をイイ感じの方
に移すことと、反対側の手や首をゆっくり動かしてもらうことです。言葉の通じる
人なら声をかけて行ってもらい、操者は倒れないように支えてあげます。言葉の通
じない人の場合には、操者がゆっくり肩など動かして体重を移してみて、移しやす
い方に移してもよいと思います。

 姿勢を変えたくなったり、イイ感じが消えたら終わりにして、脇の下のしこりの
つらさが減ったか確認してみてください。


脇の下の背側の水掻きを摘むことをきっかけに †
 次に、背側の水掻きを摘んでしこりを探してみましょう。


しこりを探す †
 ラクな姿勢で座ってもらい、脇の下と背の間に水掻き状に張っている筋肉を摘ん
でみます。ここも腕をつらくない範囲で横に上げてもらうと探しやすいです。やは
り、くすぐったいこともあるので、しっかりつまんで探し、2つ3つ見つかったら一
番痛いか嫌な感じのものを選びます。


しこりを痛くない方に動かす †
 そのしこりを肩の方に動かします(写真8)。
画像の説明写真8
胸側と同じように、肩の方に動かすと痛みが減る可能性が一番高いです。


イイ感じを増やす †
 まずは、手首捻転を付け加えます。しこりと同じ側の手首を最初に反らせてから、
中指が小指側に回っていく手首捻転をします(写真9、10)。
画像の説明写真9
画像の説明写真10
こうすると、摘んでいるしこり辺りの筋肉がより縮んで膨らんでくることを確認し
てください。やはり、しこりが膨らんできた筋肉に埋もれるように目立たなくなり、
しこりのつらさが減ることも確認してください。

 体重をイイ感じの方に移すことと、反対側の手や首をゆっくり動かしてもらうこ
とを付け加えるのも同じです。言葉の通じる人なら声をかけて行ってもらい、操者
は倒れないように支えてあげます。言葉の通じない人の場合には、操者がゆっくり
肩など動かして体重を移してみて、移しやすい方に移してもよいと思います。

 姿勢を変えたくなったり、イイ感じが消えたら終わりにして、脇の下のしこりの
つらさが減ったか確認してみてください。


脇の下前後の水掻きのしこりを取ると、首や肩がラクになる †
 脇の下と胸の間、そして、脇の下と背の間、この2カ所に水掻き状に張っている筋
肉の中のしこりをいま書いた2通りの操体で緩めると、首や肩が急にラクになった感
じがすることが多いです。確認してみてください。

 ヒトって陰の側のつらさって感じにくいみたいです。首や肩に比べると、脇の下っ
て体の陰の側ですね。そういうところのつらさを感じるよりも、首や肩がつらいと
感じるようです。もちろん首や肩もこっているわけですが、首や肩を緩めてもまだ
つらさが残っているときに、脇の下の周りを緩めると急に肩や首もラクになったと
感じると言われることが多いです。


操体の基本手順から見てみる †
 今回の操体を操体の基本手順からみてみましょう。
(1) ラクな姿勢になってもらう
   (=ラクな姿勢で立つ、座る)
(2) 目立つところを少し強調してイイ感じを探す
   (≒やりやすい方を少し強調)
   今回:しこりの上の皮膚をズレやすい方にズラす
      しこりを摘んで動きやすい方に動かす
(3)他にイイ感じがないか探し、あったら加える
    1.目の動き、手首の動きを加える
    2.体重を移しやすい方に移す
   今回の付け足し:指揉み
           姿勢をゆっくり変えてもらう
(3) 息が深くなるかイイ感じなら続ける
(4) 姿勢を変えたくなったら終える
   (体重を戻す=姿勢を変える)


自然則を味わい身につけていく †
 今回、操体の自然則として、「しこりのある筋肉を縮める方向に動かして、しこ
りが縮んで膨らんできた筋肉に埋もれるようにする、つまり、しこりは筋肉が縮ん
だまま伸びなくなった状態なので、そのしこりよりも周りの筋肉が少し余分に縮ん
だ状態の格好をしばらく続けていると、しこりは緩む」というのは、どの筋肉にも
言えるので、よく味わい身につけるようにしてください。

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