和方養生技術伝承塾~鍼灸・操体実践講座~ 急性期から慢性期まで患者さんが喜ぶ技術を伝承します

術伝流操体no.3

腰痛の動作制限は前屈と捻転の2つが多い †
 前回(術伝流操体no.2)は、腰痛の人に効果がある横向き寝からの操体を紹介し
ました。今回は、それで起き上がれるようになったけれど、立ち上がって試しにい
ろいろ動いてみたら動作制限が残っていた場合の操体を紹介します。腰痛でも立っ
て歩ける程度の場合には、こちらを先に試しても効果があることが多いです。

 腰痛の場合の動作制限は、主に2つあると思います。前屈ができない場合と捻転が
できない(左右どちらかに振り向きにくい)場合の2つです。前屈ができない場合に
は顔が洗えないという言葉が出てくることが多いです。


前屈制限を緩和する操体 †
 操体では、基本的に、ある動作ができなかったら、その逆の動作をします。これ
を橋本敬三先生は「逆モーション・バック運動」と呼んでいました。ですから、前
屈ができない場合には後屈すればよいということになります。


手順 †
(1)支えてあげながら後屈してもらう
 痛くない範囲で前屈してみて、前屈できる限度を確かめたら(写真1)、
画像の説明写真1
そこからゆっくり体を後屈してもらいます。ふらついたりしないように背中などを
支えてあげます(写真2)。
画像の説明写真2

(2)視線や手首の動きを加える
 背中が直立に近くなったら、目で天井の方を見るように顎を上げていってもらい、
それにつれて後屈していくようにしてもらいます。両方の手首を小指側が掌側に回っ
ていくように捻転すると少し余分に捻転できると思います。操者は背中側に回って
両方の手首の捻転を少し協調してあげてもよいと思います(写真3)。
画像の説明写真3

(3)体重移動を加える
 体重を爪先の方に移してもらいます。そうすると、また少し余分に後屈できると
思います。操者は膝などでお尻を押してあげてもよい(写真4)と思います。
画像の説明写真4

(4)息が深くなるかイイ感じなら続ける
 息が深くなったり、イイ感じがしたら続けます。わからないときには、辛くな
ければ、体重をもどしたくなるまで続けます。

(5)体重を戻したくなったら終える
 体重を爪先の方から戻したくなったら終わりにします。また、イイ感じが消えた
り、お腹の息が浅くなったりするのも終わりにしていい合図です。が、体重を戻し
たくなるというのが一番わかりやすいと思います。

(6)よくなったか前屈してみる
 よくなったかどうか確かめるために、ゆっくり前屈してみます(写真5)。
画像の説明写真5
この場合には、まず体重を踵の方に移します。それからゆっくり床を見るようにし
ながら前屈していきます。両方の手首を小指側が手甲側に回るように捻転していく
と、より前屈しやすいと思います。


別法 †
 この操体にはいろいろなバリエーションがあります。

・別法1:柳生影流の技を用いる(写真6)
画像の説明写真6
 受け手の方に操者の両方の手首を掴んでもらい、操者と受け手の人が背中合わせ
になるようにします。そこから、操者が前屈し、操者の背中に受け手の人を乗せて
いきます。操者が疲れたり、受け手の人が戻りたくなったら終わりにします。

 受け手の方が操者より背が低く軽い場合にうまくいくことが多いです。もともと
は古武術の柳生影流の技で、手を掴まれた瞬間に背中合わせになり背を丸め、両腕
を振り下ろすと相手を投げ飛ばすことができるのだそうです。腕を掴んだ相手は早
く動かれた場合に懸命に腕を掴むので受け身が取れないとも聞きました。

・別法2:四つん這いの上に寝てもらう(写真7)
画像の説明写真7
 操者が四つん這いになり、操者の背中の上に受け手の人の背中を乗せてもらいま
す。布団の上などで行うと、うまくいくことが多いです。

・別法3:横向き寝で背を反らしてもらう(写真8)
画像の説明写真8
 受け手の方に横向きに寝てもらい、ゆっくり後屈してもらいます。操者は受け手
の人の背中側に位置し、無理にない範囲で、受け手の人の腰を押しながら、大腿部
や肩を手前に引きます。これも布団や畳の上で行うとうまくいくことが多いです。

・別法4:背中の皮膚を寄せる(写真9)
画像の説明写真9
 うつ伏せで寝てもらうとうまくいくことが多いですが、座位や立位でもうまくい
くことがあります。
 肩甲間部と腰椎部に操者の手の平を当て、その両方の皮膚を近づけるようにズラ
します。お腹に息が深く入ったり、イイ感じがしたら続けます。座位や立位で行う
場合には、爪先の方への体重移動や手首の捻転を付け加えると効果が出やすくなり
ます。


1人で行う方法(写真10) †
画像の説明写真10
 身長が160cm以上あれば、部屋の入り口の上の部分に手をかけ、両足を一歩前に出
します。そうすると自然に後屈します。目は天井を見るようにし、体重を爪先の方
に移します。体重を戻したくなったら終わります。

 背が低い人は、もう少し低い物に掴まって行うとよいと思います。壁に頭を付け
て一歩前に出てもよいかな。


捻転制限を緩和する操体 †
 左右どちらかに振り向きにくい捻転制限がある場合には、やりにくい方からやり
やすい方に捻転していく逆モーション・バック運動をします。左捻転がしにくけれ
ば右捻転をするわけです。


手順 †
(1)逆向きに捻転していく
 立位で、痛くない範囲で左右捻転してみて、やりにくい方がどちらか、どの程度
か確かめます(写真11、12)。
画像の説明写真11
画像の説明写真12
やりやすい方に捻転していきます。ふらついたりしないように支えてあげます
(写真13)。ラクに捻転できるまで捻転します。
画像の説明写真13

(2)視線や手首の動きを加える
 ラクに捻転できるまで捻転し止まった姿勢で、目を今まで捻転していた先を見る
ように動かし、捻転した側の手首を小指側が手の平側に回るように捻り、反対側の
手首を小指側が手の甲側に回るように捻ります。そうすると、体ももう少し余分に
捻転できるようになります。操者が手首の捻りを少し強調してあげるのもよいと思
います(写真14)。
画像の説明写真14

(3)体重移動を加える
 捻転していく方の足に体重を移動します。すると、また少し余分に捻転できるよ
うになります。操者が体をささえてあげる(写真14)と、体重が移しやすいです。

(4)息が深くなるかイイ感じなら続ける
 息が深くなったり、イイ感じがしたら続けます。解らないときには辛くなければ、
体重をもどしたくなるまで続けます。

(5)体重を戻したくなったら終わる
 体重を戻したくなったら終わりにします。

(6)良くなったか反対側に捻ってみる
 良くなったかどうか確かめるために、ゆっくりやりにくかった側に捻転してみま
す(写真15)。
画像の説明写真15
この時に、まず目で捻転していく先を見るようにし、体重も捻転していく側に移し、
捻転していく側の手首は小指側が手の平側に回るように捻り、反対側の手首は小指
側が手の甲側に回るように捻ると、より体を捻転しやすくなります。


別法:仰向け膝倒し(写真16) †
画像の説明写真16
 仰向けで膝立から倒しやすい方にしばらく膝を倒してもらいます。要するに、立
ち姿勢での捻転と同じことを仰向けでやってもらうだけです。つまり、逆に言えば、
捻転解消の操体は、仰向け膝倒しという定番操体の立位版というわけです。

 これと同じことを皮膚操体で行う方法もありますが、寝方別繰体のところで詳し
く解説します。


1人で行う方法 †
 部屋の真ん中の柱などに手をかけ、そこを支えにして捻転しやすい方に体を捻
転し、捻転していく方の足に体重をかけます(写真17)。体重を戻したくなったら
終わります。
画像の説明写真17

もちろん仰向け膝倒しを自分で行っても構いません(写真18)。
画像の説明写真18


立位の動作制限は同じやり方で解消できる †
 立位での動作制限は基本的に今回練習したのと同じやり方で解消できます。
つまり、立位での動作制限を解消する操体の基本形は次のようになります。

(1)制限動作と逆向きの動作をする
(2)目の動き、手首の動きを加える
(3)体重を移しやすい方に移す
(4)息が深くなるかイイ感じなら続ける
(5)体重を戻したくなったら終える
(6)良くなったか確かめる


操体の基本手順 †
前回の基本手順ともほぼ同じです。前回の手順で書けば――。
(1)ラクな姿勢になってもらう(=ラクな姿勢で立つ)
(2)目立つ処を少し強調してイイ感じを探す(≒やりやすい方を少し強調)
(3)他にイイ感じがないか探し、あったら加える
   1.目の動き、手首の動きを加える
   2.体重を移しやすい方に移す
(4)息が深くなるかイイ感じなら続ける
(5)姿勢を変えたくなったら終える(体重を戻す=姿勢を変える)

 ということで、基本的に、操体というのは、みな、この手順で良さそうかなとい
う気がします。


立位での操体は体重を移すのがポイント †
 立位での操体のポイントの1つは、体重を移しやすい方に移すことです。体重をあ
る方向にかけるというのは、そう長い時間続けられる動作でないので、操体のタワ
メの間が短くなり、1つの操体にかける時間を短くできます。つまり、短時間で効果
が上がりやすくなります。


今回の操体は盤若身経に由来する †
 今回は、腰痛にまつわる動作制限を解消する操体を紹介しました。橋本敬三先生
が盤若身経として発表された立位での基本運動を少し改良したものです。橋本先生
は付け加えることとして体重移動を書いていましたが、それに目の動きと手首の動
きを加えました。

 ですから、それほど辛くないときにも試してみて左右差や前後差があるようなら
試してみると、立位での体のバランスが改善します。後屈がしにくいときには、前
屈をしてみてください。習慣にできるとよいですね。


次回は、肩こりなどの辛さの解消 †
 腰の痛みの解消に関しても、まだいろいろな操体がありますが、使う頻度は前回
と今回に紹介したものに比べてグッと少なくなります。細かいものを覚えるよりも、
よく使う基本的なものを覚え、それにまつわる自然則を覚えていった方が臨床の場
で使いこなしやすいと思います。それで、次回からは、肩こりなど上半身の辛さを
解消する操体に進みます。

>>>つぎへ>>>術伝流操体no.4

powered by Quick Homepage Maker 5.0
based on PukiWiki 1.4.7 License is GPL. QHM

最新の更新 RSS  Valid XHTML 1.0 Transitional