和方養生技術伝承塾~鍼灸・操体実践講座~ 急性期から慢性期まで患者さんが喜ぶ技術を伝承します

術伝流操体no.2

ラクな横向きで寝てもらう †
 腰痛の人は、特に定番の操体の基本姿勢である仰向けやうつ伏せで横になるのが
辛い人が多いです。ぎっくり腰の人の中には横向きで丸まった形以外は取れない人
もたくさんいます。また、腰の真ん中あたりが痛い人には横向きにもなれずに、丸
めた布団に抱きつくように丸まった姿勢で固まっている人もいます。ですから、臨
床の場ではそういう姿勢からでも始められるような操体が必要になるわけです。

今回は、腰痛の人に一番多い痛い側を上にした横向き寝で丸まった姿勢からの操体
を紹介します。実際にぎっくり腰で寝返りも打てない人にも行ってきて好評を得て
いる方法です。ぎっくり腰でなく他の症状の場合でも、ラクな姿勢が横向きである
場合には、そのまま使って効果が出せる方法なので、いろいろ試してヤジウマして
みてください。


指裏のしこりを痛くして逃げてもらう †
 腰痛の人は、症状が重くても結構がんばって無理をしているので、その時寝てい
る姿が一番ラクかというとそうでない場合もあります。たとえば、写真1のように寝
ている場合も多いです。
画像の説明(写真1)
確かめるためには、上になっている足の小指や第4指の指裏関節部の端にあるしこり
を押してみます(写真2,3)。
画像の説明(写真2)
画像の説明(写真3)
そうすると、痛くてがまんできないため、膝を曲げて逃げ出しますが、そのまま手
を離さずにしこりを押してもあまり痛くない位置まで逃げてもらいます(写真4)。
画像の説明(写真4)
たいていの場合、胴体と大腿が120度前後の位置まで逃げると、指裏のしこりが痛く
なくなります。かなり下半身を丸めた状態です。本来は、この姿勢が一番ラクな姿
勢なのだと思います。丸くなった方がラクなのに無理して足を伸ばしていたのかな
と思います。

 指裏のしこりは、指裏の関節部の皺の両端にあることが多く、直径3mmぐらいでシ
ジミの貝殻の片方みたいな形で、表面はツルツルで骨にくっついていて、骨が少し
太くなった感じを受けます。腰痛の場合には、足小指の第4指寄りと、第4指の小指
寄りにあることが多いです。押すと痛いのですが、麻痺してしまっていて、しばら
く揉んで、ようやく痛みが出てくる人もいます。操者の指先よりも手指関節の横側
で揉んだ方が揉みやすいことが多いです。


イイ感じを探す~お尻を膝の方に動かす †
 こういう痛い側を上にした横向き寝で丸くなった場合には、指裏のしこりが痛く
なくなるまで逃げてもらうと、上になっている足の膝が、下になっている足の膝よ
りも前に出る場合がほとんどです(写真5)。したがって、ここではその状態からの
操体を解説します。
画像の説明(写真5)
 その姿勢からイイ感じを探していくわけですが、イイ感じを探すコツは「その姿
勢を少し強調する」ことです。この辺りが操体らしいところです。普通の方法は歪
んでいる姿勢を元に戻そうとする動きをきっかけにすることが多いわけですが、そ
ういう動きが辛いからこんな姿勢になっているわけで、そういう動きは痛いことが
多いです。私の次男もリハビリでの、そういう動きを痛がって逃げ回っていました。
そういう動きと逆に、その姿勢を少し強調するとイイ感じがすることが多いです。

 さて、痛い側を上にした横向きで下半身を丸めて上の膝が前に出ている姿勢を強
調するにはどうしたらよいでしょう。もっと丸めたらとか、膝をもう少し前に出し
たらとかいろいろ考えられると思います。たくさんの人にいろいろヤジウマさせて
もらってイイ感じを探してきたのですが、今のところ最も好評なのが、お尻を膝の
方に動かすことです(写真5)。9割ぐらいの人にイイ感じが増えるようです。こう
すると膝が前に出ていることが少し強調されます。

 手が滑らないように操者の掌底を大転子か腰骨に当て、ゆっくりお尻の上の部分
を膝の方へ少し、そう3cmほど動かしてみます。受け手の人が言葉の通じる人なら
イイ感じがするか聞いてみます。イイ感じがするなら続けます。わからない場合や、
言葉の通じない人の場合は、辛くない場合にはしばらく続けてみます。
お腹に息が深く入っていくようになれば体は気持ちよさを感じていることが多いで
す。操体に限らず按摩でも指圧でも鍼灸でも、その時の施術が体に合っていれば自
然に深い腹式呼吸になります。この息を読めれば、つまり目で見て手で触って判断
できれば、施術が適切かどうかを判断できます。読めない人はジックリ練習して読
めるようになりましょう。


イイ感じを付け足す~肩は2通り †
 ラクな姿勢からイイ感じが1つ決まったら、ほかにイイ感じがないか探して見つかっ
たら付け加えます。腰痛で横向き寝の場合には、肩の動きを付け加えるとイイ感じ
が深くなることが多いです。ただ、下半身と違って9割こうだと言うのはなくて大き
く分けて2通りになります。体全体で見ると、捻れていくタイプ(写真6)
と丸まっていくタイプ(写真7)
です。その2つのタイプのどちらか判断するには、肩を軽く
前後に動かしてみます。肩が胸側に動きやすいなら丸まるタイプ、肩が背中側に動
きやすいなら捻れていくタイプです。言葉の通じる人にはどちらがイイ感じか確認
してみてください。


捻れていくタイプ(写真6) †
画像の説明(写真6)
 捻れていくタイプの場合には、腕を大腿と平行に背中側に伸ばすか、肩を通り大
腿の延長線と直行する線上の背中側に伸ばすかするとイイ感じが深くなることが多
いです。そして、大腿と直行する方に腕を伸ばした場合には、その手の小指側を手
の平側に少し捻ると、もう少しイイ感じが深くなることが多いです(写真8)。
画像の説明(写真8)
言葉の通じる人には声をかけて、煩わしくなければ自分で少し捻転してもらうのも
よいと思います。ついでに首も捻りやすい方に捻ってもらうともう少しイイ感じが
深くなるでしょう。

受け手の人には言葉をたくさんかけてほしい人と、できるだけ黙っていてほしい人
がいます。その辺りの判断も臨床の場では大切になります。声をかけてほしがって
いない場合には、できるだけ言葉を少なくして操体できる腕を身に付けましょう。


丸まっていくタイプ(写真7) †
画像の説明(写真7)
 丸まっていくタイプの場合には、肩を少しお腹よりに動かすとイイ感じが深くな
ることが多いです(写真7)。また、手を肩甲間部に移し、背中の丸みを少し強調
する感じで肩甲間部を押すとイイ感じが深くなる人もいます(写真9)。
画像の説明(写真9)
声をかけても大丈夫そうなら、目をお腹の方に向けてもらったり、手の小指側を手
の平側に回してもらったり、足の甲を少しそらしてもらったり(爪先上げ)すると
イイ感じが深くなりやすいと思います。


姿勢を変えたくなったら終わり †
 どちらのタイプも姿勢を変えたくなったら、その操体を終わりにします。イイ感
じが消えたり、お腹の息が浅くなるのも目安になりますが、姿勢を戻したくなると
いうのが一番わかりやすいと思います。言葉の通じない人の場合には、押している
操者の手の平に受ける圧で判断します。腰や肩を動かしている手が引き込まれるよ
うに感じるときは、もう少し余分に動かすか、もう少し続けてほしいということ
ですし、手を戻そうとする圧を感じたときには、少し動かしすぎているのでほんの
少し戻した方がよいか、その操体を終わりにしたくて姿勢を変えたいときです。慣
れてきたら、手の平に感じる圧を判断基準にすると、1つの操体をしている最中も刻
一刻と変わっていく受け手の人の体の要求に合わせていくこともできるようになり
ます。


仰向けやうつ伏せになれたら定番操体や按摩・指圧 †
この操体でぎっくり腰など腰痛がだいぶ良くなるので、仰向けやうつ伏せになれる
ようになったら、その姿勢での定番操体をしてもいいし、按摩や指圧をしてもいい
と思います。慣れてくれば、今回紹介した操体をしながら按摩や指圧ができるよう
になります(写真10)。
画像の説明(写真10)
膝で腰を膝の方に動かし片手で肩を動かし、空いている手で、上になった大腿側面
や膝裏からふくらはぎを指圧や按摩したりもできます。


立ち上がれたら可動域制限の改善など(次回) †
 起き上がって動けるようならいろいろ動いてもらい、可動域制限が残っているよ
うなら、それを改善する操体をしていきます。それは次回に説明します。

 また、この操体がイイ感じがしない人には、いろいろ試してイイ感じを探してい
けばいいです。たとえば、膝をお尻のほうに動かすのがイイ感じの人の場合には、
姿勢がすぐに変わって仰向けに近い格好や逆向きの横向きになったりする人が多い
です。ただ、まずは、一番多いタイプをしっかり身に付けた方が臨床の場で効果を
上げやすいと思います。少ないタイプもある程度まとめてあるので、機会があれば
解説しますが、それよりもいろいろなタイプに共通する操体の自然則を先に身に付
ければ、珍しいタイプのイイ感じもある程度予測できるので、術伝流操体を解説し
ながら操体の自然則も解説していきたいと思っています。


今回の操体は定番操体を横向き寝にしただけ †
 今回紹介した操体は、実を言うと、有名な定番操体を横向きにしたものです。わ
かりますか? 

 捻れていくタイプは、仰向け膝倒し(農山漁村文化協会刊『万病を治せる妙療法
操体法』40ページ)(写真11)を横向き寝にしたものです。
画像の説明(写真11)
仰向けでシーツに背中を付けた姿勢から、膝と胴体の角度を変えずに、背中を上げ
て大腿側面をシーツに付けた姿勢に変わっているだけです。

 丸まるタイプは本には載っていませんが、仙台の今昭宏先生が一般向け講習会の
最初によく行う仰向けからの膝の抱え込み(写真12)を横向きにしたものです。
画像の説明(写真12)
このように、定番のタワメの間の形をいろいろな寝方でしてみると、ある特定の姿
勢がラクな人に効果的な操体を作っていくことができます。


横向きがラクならいろいろな症状に効く †
 今回紹介した操体は、ぎっくり腰でなく他の症状の場合でも、ラクな姿勢が横向
きである場合には、そのまま使って効果が出せる方法なので、いろいろ試してヤジ
ウマしてみてください。

 たとえば、以前に障害が重くて片方を下にした横向きでしか寝ない人がいました、
家族や医療関係者がいろいろ反対向きに寝かせようとしてもすぐ同じ向きになって
しまうとのことでした。その人に今回紹介した操体を試みたところ、丸まるタイプ
でした。数分行って手の平に押し返す感じを受けて終わりにしたら、しばらくして
自分で反対側を下にした横向き寝になりました。


操体の基本手順 †
 今回書いた以下の手順は、他の姿勢でも同じです。

(1)ラクな姿勢になってもらう
(2)目立つ処を少し強調してイイ感じを探す
(3)他にイイ感じが無いか探し、有ったら加える
(4)息が深くなったら続ける
(5)姿勢を変えたくなったら終える


1人で行う方法 †
 最後に、今回の操体は1人でもできます。ラクな寝方が横向きなら、膝を少しお腹
の方に寄せ、上になった大腿の上に座布団1、2枚乗せ、手を後ろに伸ばしたいよう
なら伸ばして体を捻ってイイ感じを探し、手を前にした方がよければ、少しうつむ
いてイイ感じを探していけばよいのです。

>>>つぎへ>>>術伝流操体no.3

powered by Quick Homepage Maker 5.0
based on PukiWiki 1.4.7 License is GPL. QHM

最新の更新 RSS  Valid XHTML 1.0 Transitional