和方養生技術伝承塾~鍼灸・操体実践講座~ 急性期から慢性期まで患者さんが喜ぶ技術を伝承します

術伝流操体no.19

1.はじめに †
 今回からは、横向き寝の操体です。まずは、動きの操体から。体の調子が悪くなると横向きに寝るのがラ
クな人が増えていきます。横向き寝からの操体は、橋本敬三先生の本にはあまり出てきませんが、現在では
頻繁に使うので、しっかり覚えてください。

 横向き寝の場合に、まずはじめに観察するのは膝の曲げ伸ばしです。膝を曲げたほうがラクな人が多いで
す。はじめは、横向きに寝ながら足を重ねて真っ直ぐ伸ばしている人もいます(写真1)が、声をかけて膝
画像の説明写真1
を曲げた状態と真っ直ぐな状態を比較してもらうと曲げたほうがラクなことに気づく人が多いです。しかも、
膝を重ねているよりも膝をズラしてどちらの膝も床に着いている状態がラクな人がいちばん多いです。


2.横向き膝曲げで、動きの操体 †
 横向き膝曲げの姿勢がラクな場合に、つぎに観察するのは、上になっている側の足の膝が下になっている
側の膝よりも前に出ている(写真2)か、後ろ側(写真3)かです。
画像の説明写真2
画像の説明写真3
比較すると、前に出ているほうがラクな人が多いです。


1)上の足の膝が前なら †
 上側の膝が前の場合には、上の腰を畳のほうに動かしていくのが気持ちよい場合が多くなります。膝と腰
の位置関係によって少しずつ違いが出てくるので、まず膝の位置がいちばんラクな位置になっているか確認
する必要があります。

 上になっている足の小指の4指側か、4指の小指側の指裏関節部の端を少し痛くすると、膝を動かして逃
げます(写真4)。
画像の説明写真4
痛みがいちばん減ったところがラクな膝の位置になることが多いです。


場J)上側の大腿に注目する †
 上になっている足の膝の位置が決まったら、つぎに大腿に注目します。ラクな寝方が決まった場合、体が
そのときに変えたがっているところは、大腿の延長線上か平行な線上、大転子を通り大腿と直行する線上に
あることが多くなります。そして、大腿の延長線上や平行な線上に胴体があるか、大転子を通り大腿と直交
する線上に胴体があるかによって決まってくることが多いです。3つすべて試して、気持ち良さが感じられ
るか、腹の息が深くなるか確かめてもよいのですが、横向き寝の場合には、圧倒的に、大腿と平行な線上に
ある場合が多くなります。

 具体的に動きとして言えば、尻を膝のほうに動かすときに、気持ち良さが感じられたり、腹の息が深くな
ることが多いです。

(i)尻の上側を膝のほうに動かす
 大転子や腰骨の背中側(蝶骨の後側上端)のあたりに手のひらをおいて、手が滑らないように、膝のほ
うにゆっくり動かしていきます(写真5)。軽い力で動く範囲で。
画像の説明写真5

・イイ感じを増やして止めたくなるまで続ける
 気持ち良さが感じられるか、腹に息が深く入ったか確認し、膝のほうへ動かそうとする力を加え続けます。
言葉の通じる人には声をかけて、操者の手が触れていないところ、たとえば、首を左右どちらに回すと気持
ち良さが増えるか聞いて、気持ち良さが深くなるように首を動かしてもらいます。触れていない手足も気持
ち良さが深くなるような格好を探してもらいます。わずらわしくない範囲で。

 受け手が姿勢を少しずつ変えていくのに合わせて、ちょうどよく釣り合ったタワメの間になるように、操
者も加えている力の入れ方、力を入れる方向や強さなどを少しずつ変えながら支え続けます。

 受け手が大きく姿勢を変えたくなるか、息が浅くなったり、気持ち良さが感じられなくなるまで続けます。
言葉が通じない人の場合には、引き込まれるように感じられるときは続けてほしいというサインで、押し返
すように感じられるときには終わりにしてほしいサインです。

 しばらくラクな姿勢で休んでもらいます。

(ii)腕や首の動きを加える
 今度は操者の両手を使ってみます。片方の手は「場@)尻の上側を膝のほうに動かす」で説明したように、尻
を膝のほうに動かします。もう一方の手をどこに置くかです。目を付けるのは、肩をはじめ上半身です。

 横向き寝で膝を曲げた姿勢がラクで尻を大腿に動かすと気持ちよい場合には、上半身のラクな動きはおも
に二通りになります。肩のあたりも胸のほうに動かしたほうがよい場合と、反対に背中のほうに動かしたほ
うがよい場合です。比較すると、背中側に動かしたほうがよい場合がやや多くなります。

 肩を背中側に動かしたほうがよい場合には、体全体を腰椎を境に捻る動きになります。腕を背中側にして
大腿と平行に伸ばす(写真6)か、
画像の説明写真6
肩から大腿と直行する線上に伸ばす(写真7)かそのどちらかがよい場合が多いです。
画像の説明写真7
しかし、たまに胴体側面延長線上に伸ばしたいという人もいます(写真8)。
画像の説明写真8
こういう人は体を捻りたいというよりも体の横側を伸ばしたいのだろうと思います。

 肩を前に動かすのがラクな場合には、体全体を少し前屈させながら上になっている側を畳や布団に近づけ
ていく動きになります(写真9)。
画像の説明写真9

・胴体が捻れる場合
 胴体が捻れていくのがよい場合には、空いている手のひらで肩を包み込むようにして滑らないようにし、
ゆっくり動きやすいほうに動かします。軽い力で動く範囲で。

 腕を大腿と平行に伸ばしている場合には、その手をその方向に伸ばすようにする動きがよいことが多くな
ります(写真6)。
画像の説明写真6
腕を大腿と直行するほうに伸ばしている場合には、小指側が手のひら側に回るような手首捻転がよいことが
多くなります(写真7)。
画像の説明写真7

 イイ感じを増やす方法は、片手で膝のほうに動かした場合とほぼ同じですが、受け手が動かせるのはおも
に首になります。

 姿勢を大きく変えたくなるか止めたくなるまで続け、終わった後はしばらく休んでいただきます。この場
合には、仰向けになって休みたがる人が多いです。

・胴体が前屈する場合
 胴体がやや前屈しながら上側が畳や布団に近づいていく場合には、空いている手のひらの下部を肩と肩甲
骨の境目あたりに置き、手のひらで肩関節を包み込んで滑らないようにし、ゆっくり動きやすいほうに動か
します(写真9)。
画像の説明写真9
軽い力で動く範囲で。この場合には、肩は胴体をやや前屈させるようにしながら畳や布団に近づけていく動
きがよいことが多いです。また、それに合わせて、尻に加えている力も体全体をやや前屈させる方向に向き
を変えたほうがよいことが多いです。両手で加えている力が合わさって、体全体に円を描くような感じにな
りながら、布団や畳に近づけていきます(写真10)。
画像の説明写真10

 イイ感じを増やす方法は、今までほぼ同じですが、首を胸に近づける感じで少し動かすのがイイ感じなこ
とが多いようです。

 姿勢を大きく変えたくなるか止めたくなるまで続け、終わった後はしばらく休んでいただきます。この場
合には、うつ伏せになって休みたがる人が多いです。


場K)足首の動きをきっかけに †
 横向き寝・膝曲げ・上膝前の姿勢からの動きの操体は、尻を膝のほうに動かす操体を気持ちよいという人
が圧倒的ですが、中には足首の動きをきっかけにするのがよいという人もいます。

 言葉の通じる人には声をかけて、どちらの足首に意識がいきやすいか、どちらの足首の状態が気になるか
、どちらの足首の状態を感じやすいかなど聞いて、どちらにするか選びます。上になっている足首を選ぶ人
が多いです。

 決めた足首を左右どちらかに捻転してみることをきっかけにします。上側の足を選んだ場合は親指を支点
に踵を持ち上げてあげる(写真11)のがよいことが多いです。
画像の説明写真11
下側の足を選んだ場合は、親指側を甲の側に回しながら足全体を伸ばす(写真12)という動きがよいとい
う人が比較的多いです。後者の動きは基本的な連動とは違っていて興味深いです。
画像の説明写真12

 イイ感じを増やす方法は、ほぼ同じですが、足首をキッカケにしているので、首以外に両手や反対側の足
も動かせます。

 姿勢を大きく変えたくなるか止めたくなるまで続け、終わった後はしばらく休んでいただきます。


場L)膝曲げや、足首背屈から †
 いままで説明した以外でも、たとえば、爪先上げ、つまり足首を背屈(写真13)をきっかけにしたり、
画像の説明写真13
上になっている膝の曲げを深くしながら胸のほうに近づける(写真14)ことをきっかけにしたりするのが
よい場合もあります。後者の場合には、足首の背屈を付け加えるとイイ感じが増えることが多いです。
画像の説明写真14
いままで書いてきた動きでイイ感じが少ないときに試してみてください。実際のやり方は、いままでのを参
考に工夫してみてください。


2)下の足の膝が前なら †
 下の足の膝が前の場合(写真15)には、
画像の説明写真15
上になっている膝や大腿を尻のほうに動かす(写真16)動きがよいことが多くなります。
画像の説明写真16
そして、操体していくとわりと早くに姿勢が変わります。仰向けになるか、反対側を下にした横向き寝の場
合が多いです。本来はそういう姿勢のほうがラクな人が何らかの理由で最初の姿勢がラクに思ってしまった
という場合が多いようです。

 もちろんそうでなく、この姿勢が本当にラクな場合もあると思います。そういうときには、いままで説明
したやり方を参考に操体してみてください。


3)膝と膝が重なっていたら †
 横向き・膝曲げの寝方でも、膝と膝が重なっている(写真17)姿勢がラクな場合には、
画像の説明写真17
お尻を動かすことをきっかけにするよりも、膝同士をくっつけ合う動きが気持ちよい場合が多いようです。
受け手が言葉の通じる人なら、もちろん声をかけて膝を押しつけ合ってもらい、その動きを体全体に伝えて
もらうという方法もできます。


場J)膝の内側同士を押し合う †
 ここでは、疲れて自分であまり動きたくない人や言葉の通じない人を相手にどうするかと説明していきま
す。

 操者の片方の手のひらを下になっている膝に当て、もう一方の手のひらを上になっている膝の上に乗せま
す。そして、膝同士が痛くない範囲で押し合うように両手のひらを寄せていきます(写真18)。
画像の説明写真18

 イイ感じを増やす方法には、この場合は、押し合っている膝を脇の下のほうに動かしたり、足首を背屈し
たり、首を臍を見るように前屈したりする連動がうまれる可能性が多いようです。ですから、操体になれて
なくて連動がわからない人の場合には、「膝が胸のほうに動きやすくないですか? 足首は反りやすそうに
見えますが。おへそをみると気持ち良さが増えませんか?」とか声をかけてみるのもよいと思います。

 姿勢を大きく変えたくなるか止めたくなるまで続け、終わった後はしばらく休んでいただきます。


3.横向き寝で手の動きをきっかけに †
 横向き寝では足など下半身をきっかけにしたほうがイイ感じのすることが多いですが、手の動きをきっか
けにすることもできます。いろいろあると思いますが、代表例を説明します。


1)手のひらを合わせて †
 横向き寝でラクな格好で寝た姿勢から、両手のひらを合わせます。合わせた手のひらをまずどちらかに捻
転します。イイ感じがするでしょうか? しない場合には、ほかの動き(関節運動の4種8方向の中から)
も試して、いちばんイイ感じのする動きを選び、操者はその動きが元に戻らないようにほんの少し強調して
支えます(写真19)。
画像の説明写真19

 イイ感じを増やすには、首だけでなく足も動かすよう声をかけてみるとよいです。また、一つ一つ動かし
てもらうよりも「気持ち良さが深くなる姿勢を探してゆっくり動いてください」という感じの声掛けのほう
がいい場合もありますので、いろいろ工夫してみてください。

 姿勢を大きく変えたくなるか止めたくなるまで続け、終わった後はしばらく休んでいただきます。


2)両手小指を手のひら側に †
 横向き寝の姿勢から両手を合わせ、両手の小指がどちらも手のひら側に回るような手首捻転をします。
つまり、両手の小指側を合わせた部分を中心にして両方の親指側が手の甲の側に回るような手首捻転をして、
だんだん手の甲同士が合わさっていくような動きをしてみます(写真20)。
画像の説明写真20
イイ感じがしたら、操者はその状態が維持できるように両方の手のひらを受け手の両方の手のひらに重ねて、
ほんの少し押しつけ合うようにします(写真21)。
画像の説明写真21

 イイ感じを増やすには、やはり、首だけでなく足も動かすよう声をかけてみるとよいです。足首を背屈し
ながら膝を胸に近づけてくることが多いように思います。

 姿勢を大きく変えたくなるか止めたくなるまで続け、終わった後はしばらく休んでもらいます。


4.おわりに †
 横向き寝からの動きの操体の基本的なものを紹介しました。次回は、横向き寝からの皮膚の操体と重さの
操体です。

>>>つぎへ>>>術伝流操体no.20

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