和方養生技術伝承塾~鍼灸・操体実践講座~ 急性期から慢性期まで患者さんが喜ぶ技術を伝承します

術伝流操体no.17

1.はじめに †
 今回からは、うつ伏せ寝の操体です。まずは動きの操体から。操体では、立位や
座位で生活しているときの体の土台である下半身から整えていくので、足から目を
付けていきます。うつ伏せの場合には、膝を曲げても股関節を連動して動かしにく
いので、そういう格好、つまりうつ伏せ膝立ててからの操体が多くなります。


2.うつ伏せ膝立ての姿勢から †
 ラクな姿勢を強調するという視点でいうと、うつ伏せの場合に目を付けるのは、
足首の甲側です。その部分が布団などにピッタリくっついていて、足首から先がハ
の字型になり親指同士の先端が近づいている形(写真1)をしていれば、足を布団に
つけているほうがラクだと思います。
画像の説明写真1
逆に、足先が下腿の延長に来ている(写真2)場合には、
画像の説明写真2
足首の甲側と布団などのあいだに隙間がある(写真3)ことが多くなります。
画像の説明写真3
そういう場合には、足首を上げ、膝立ての姿勢のほうがラクなことが多いです。隙
間が大きければ大きいほど、その傾向は強くなります。これは、脹ら脛の筋肉の中
に緊張したままゆるまない部分ができていて、アキレス腱を引っ張って踵を持ち上
げようとしているからです。

 操体でうつ伏せのときによくする検査で、お尻に踵を近づけるものがありますが、
足首甲側と布団などの隙間が大きいほうの足の踵がお尻につきやすいことが多いで
す。

 そういうふうに、うつ伏せに寝た姿勢で足首甲側と布団などに隙間があれば、膝
を立てた、くわしく言えば、膝を曲げて膝から先を立てた姿勢(写真4)がラクです。
画像の説明写真4
いちおう、そういう姿勢がラクかどうか、言葉の通じる人には確認してから、うつ
伏せ膝立ての姿勢から始める操体をします。


1)足首をお尻に近づける †
 定番の操体では、両方の踵をお尻に近づけていき、近づきにくいほうの足を伸ば
す方法をしますが、この操体は操体の中でも難しいものです。足を伸ばしてくる足
首寄りの下腿をもって伸ばしやすいように少し抵抗をかけながら支えてあげるだけ
でなく、途中から膝が浮いてくるので、その膝もうまく支えてあげないと、タワメ
の間が決まらず効果も出しにくいです。それに、一般的に末端を胴体から遠ざける
動きのほうが方向が広く分散していくので、タワメの間の方向を決めにくいことが
多いです。


I)きっかけからタワメに入るまで †
 それで、私はお尻に近づきやすいほうの踵をお尻にもっと近づけることをきっか
けにする方法をしています。足を伸ばした状態で布団と足首の間隔が広かったほう
がお尻につきやすいことが多いですが、そうでないこともあるので、調べてから、
お尻につきやすいほうを選んで近づけていきます(写真5)。
画像の説明写真5

 足首寄りの下腿を持って近づけていくのですが、お尻についてしまったら、そこ
で止めるのではなく、その動きを延長して強調するために、その足の膝を少し持ち
上げます。手で持ち上げていると疲れるので、正座した操者の膝の上に膝枕のよう
に乗せてしまう(写真6)とラクです。
画像の説明写真6
そうすると足首から先が少し内側(反対側の足のほう)に倒れていくことが多いで
す。そういうときには、お尻につけている側の足の大転子あたりを少し上に持ち上
げぎみにして反対側の足のほうに回転させるような動き(写真7)を付け加えると気
持ちよさが深くなることが多くなります。
画像の説明写真7


II)タワメの間のときにすること †
 息が深くなっているか、気持ちよさが感じられるか確認し、その姿勢がタワメの
間として続くように支え続けます。言葉の通じる人には声をかけて、首を左右どち
らに回すと気持ちよさが増えるか聞いて、気持ちよさが深くなるように首を動かし
てもらいます。両腕や反対側の足も気持ちよさが深くなるような格好を探してもら
います。わずらわしくない範囲で。受け手が姿勢を少しずつ変えていくのに合わせ
て、ちょうどよく釣り合ったタワメの間になるように、操者も支え方を少しずつ変
えながら支え続けます。


III)終わり方 †
 受け手が大きく姿勢を変えたくなるか、息が浅くなったり、気持ちよさが感じら
れなくなるまで続けます。言葉が通じない人の場合には、引き込まれるように感じ
られるときは続けて欲しいというサインで、押し返すように感じられるときには終
わりにしてほしいサインです。


IV)両方とも近づけにくいとき †
 少し差はあるけれど両方の足ともお尻に近づけにくい場合などは、この操体はし
ないほうがよいです。そのときには、両方の足とも伸ばす操体をしたほうがよいか
らです。


2)足首をお尻から離す †
 お尻に踵が付きにくい場合には、お尻から足首を離していく操体(写真8)をし
ますが、足は重たいし、この操体の誘導というか抵抗というか支えというかは難し
いので、私はあまりしません。
画像の説明写真8
仰向けのときとほぼ同じやり方で方向を決めたあとに皮膚の操体をすることで代用
しているので、皮膚の操体のところで説明します。


3)立て膝から下腿を倒す †
(写真9)
画像の説明写真9


I)きっかけからタワメに入るまで †
 うつ伏せ状態の大腿部にほぼ直角に下腿を立てた状態から足首を倒しやすいほう
に倒していきます。ラクに倒れるところまで来たら、上になっている足の延長の腰
を少し上のほうに回転するように持ち上げる(写真10)と気持ちよさが深くなりや
すいことが多いです。
画像の説明写真10
曲げた膝の角度が直角より大きくなってしまうと気持ちよさがなくなりやすいので、
直角よりも深く膝が曲がった状態を保つのがコツです。


II)タワメの間と終わり方 †
 タワメの間のときにすることと終わり方は、足首をお尻に近づけるときとほぼ同
じです。


4)立て膝から足首を回す †

I)きっかけからタワメに入るまで †
 うつ伏せで大腿に対し直角に下腿を立てた状態で、下腿に対し足首から先も直角
にします。踵を片手で持ち、つま先側を回して足首を捻転し、捻転しやすいほうに
捻転したままにすることをきっかけにします。定番の操体では、受け手に捻転して
もらい、操者が抵抗する方法でしますが、ラクな寝方を強調するアプローチでは、
操者が捻れやすいほうに捻っていくことをきっかけにします。足の内側、親指と土
踏まず、踵を結ぶラインと背骨のラインを比べるとだいたいどちらの側に捻転しや
すいか予測ができます。

 この操体は、仙骨あたりに響いていくという人が多いです。仙骨・骨盤はじめ下
半身の大きな歪みを修正するのに役立つようです。とくに女性に喜ばれることが多
いです。

 両足いっぺんにすることもできます(写真11)が、両足ともに外側に捻転しやす
画像の説明写真11
い人もいるので、片足ずつしたほうが無難です(写真12)。
画像の説明写真12


II)タワメの間と終わり方 †
 タワメの間のときにすることと終わり方は、足首をお尻に近づけるときとほぼ同
じです。


3.膝立てないで動きの操体 †
 うつ伏せで膝を立てない姿勢からの動きの操体での定番は、いわゆるカエル足で
す。片方の足をカエルのように曲げて横に出し、片足は伸ばしたままの姿勢のこと
です。定番の操体では、受け手に膝を脇の下のほうに動かしてもらうのに対して操
者が足首近くを引っ張って抵抗する形を取ります。


1)カエル足の姿勢を強調する †

I)きっかけからタワメに入るまで †
 ラクな寝方を強調する方法では、まずカエル足がラクかどうかを調べます。歪み
がない場合には、足の親指同士がくっつくように近づいている格好(ハの字型)が
多くなりますが、歪みが大きくなると親指が離れていき、足首と布団に隙間ができ
ていき、下腿の延長に足先がくるようになります。そして、もう少し歪むとつま先
が外側を向きます(写真13)。
画像の説明写真13
そういう状態の時には、足を伸ばしているよりも膝を曲げたほうがラクですから、
ラクに動かせる範囲で膝を曲げてもらうとカエルのような形になります。

 そういう姿勢になったら、ラクな寝方を強調する方法では、お尻を曲げている足
の膝のほうに少し動かします。そして、曲げている足の親指を支点に踵を持ち上げ
ます。両方を操者がしてもよいですし、どちらか片方を受け手にしてもらってもよ
いと思います。また、踵の下に座布団などを積んでしまうのもよいと思います。
(写真14)
画像の説明写真14


II)タワメの間と終わり方 †
 タワメの間のときにすることと終わり方は、足首をお尻に近づけるときとほぼ
同じ
です。


III)注意すること †
 今までの経験では、定番のカエル足と同じように脇の下のほうに動かすよりも、
いま説明したようにお尻を膝のほうに動かすほうが気持ちよい場合が多いようです。
しかし、そうでない人もいるので、そういう場合には、その受け手の気持ちよいと
感じる動きを少し強調するようにします。

 また、親指を支点に踵を持ち上げるよりも、爪先あげ、つまり、足の甲を背屈さ
せる動きが気持ちよいという人もいるので、踵を持ち上げるのがイイ感じではなさ
そうなら試してみてください。

 さらに、ラクに寝た姿勢でつま先が外開きしない人でも、足先に左右差があれば、
この操体が気持ちよい人も多いので、試してみてお腹に息が入ったり気持ちよさが
感じられるようなら行ってみるとよいでしょう。


4.うつ伏せから、手の動きの操体 †
 定番にはありませんが、うつ伏せから手をきっかけにする動きの操体もできます。
目の付けどころは、肘の位置と首の向きです。うつ伏せで首が左右どちらかに向い
ている場合には、向いているほうの首の付け根から肩甲間部がこっていて縮んだま
まで伸びにくいので、首がそっちに向いていることが多いです(写真15)。
画像の説明写真15
ですから、首が向いている側の首の付け根から肩甲間部にかけてをより縮ませるよ
うな動きの操体をします。いちばん簡単なものは、肘を持ち上げることです。うつ
伏せの姿勢から肘を持ち上げると、肘を持ちあげたほうの首の付け根から肩甲間部
が縮みます。

 喘息や花粉症の人は、首の付け根から肩甲間部にかけて古いツボが出ていること
が多いので、この操体を喜んでもらえます。


1)肘を持ち上げる †

I)きっかけからタワメに入るまで †
 ラクな姿勢で寝ているときに、首が左右どちらを向いているかを確認し、首が向
いているほうの肘を持ち上げます。この格好の場合には、基本的にはラクな位置に
置かれた上腕の延長線と背骨が交わるあたりのこりがいちばんひどいことが多い
(写真16)ので、そのあたりがいちばん縮むように配慮しながら持ち上げます。
画像の説明写真16
持ち上げる高さは軽くスーッと持ち上げられる程度ですが、言葉の通じる人には、
どのくらいの高さがイイ感じがするか聞くとよいでしょう。

 持ち上げたあとで、肘を頭のほうと足のほうへ動かしてみて、言葉の通じる人が
相手ならどちらがイイ感じがするか聞いて、イイ感じのする方向を選びます。言葉
が通じない人が相手なら、軽い力でスーッと動いていく方向を選びます。

 手で腕を持ち上げているのは疲れるので、高さや方向が決まったら、受け手の頭
のほうを向いて座り、受け手に近い側の膝を立てて、立てた膝の上に受け手の肘を
乗せてしまう(写真17)とラクに長時間持ち上げ続けることができます。
画像の説明写真17
両手が空くので、余裕があれば、上げている肘の延長の手の指揉みをしたり、首か
ら肩甲間部の背骨の近くのいちばんこっているツボを指圧したり皮膚ズラし(皮膚
の操体)したりもできます。

 なかには、上腕を肩より下げて寝るのがラクな人もいます。こういう人の場合に
は、肩を起点に上腕と直交する線と背骨が交わるあたりを一番縮めたがっているこ
とが多い(写真18)ので、
画像の説明写真18
そこが一番縮むようなタワメの間になるように操体をします(写真19)。
画像の説明写真19


II)タマメの間と終わり方 †
 タワメの間のときにすることと終わり方は、足首をお尻に近づけるときとほぼ同
じです。手がきっかけなので、反対側の手や両方の足を動かせたら動かしてもらい、
イイ感じが増えないか確かめます。


5.おわりに †
 今回は、うつ伏せ寝がラクな場合の動きの操体を紹介しました。次回は、うつ伏
せ寝がラクな場合の皮膚の操体です。

>>>つぎへ>>>術伝流操体no.18

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