和方養生技術伝承塾~鍼灸・操体実践講座~ 急性期から慢性期まで患者さんが喜ぶ技術を伝承します

術伝流操体no.15

1.はじめに †
 先回は、仰向け寝から動きの操体をラクな姿勢からしていくときの方法を説明し
ました。今回は、仰向け寝での皮膚の操体です。この場合も、まずはラクな姿勢に
なってもらいます。そのときに、足の指揉みをするとラクな寝方になってもらいや
すいというのも同じです。声のかけ方なども動きの操体と同じで、ラクな姿勢になっ
てもらいます。ここでは、そういうふうにして、ラクな姿勢が仰向け膝立てだった
場合の皮膚の操体から説明していきますが、その前に、皮膚の操体について説明し
ておきます。前にも書いたと思いますが、久しぶりに話題にするとおもいますので。


1)皮膚の操体のコツ †
 皮膚の操体のコツは、まず皮膚の操体する場所を特定すること、次にその場所と
皮膚の操体をする手のひらや指をピッタリ張り付いた感じにすること、そして3番
目に、皮膚をズラしたあとにできる皮膚が張った状態をたもつことです。この3つ
について順に説明していきます。


I)皮膚の操体する場所を特定する †
 皮膚の操体をするところは皮膚がズレやすいところです。鍼灸などをしている人
ならツボの出ているところだといえば、ある程度わかっていただけると思います。
ツボが出ているところは、基本的に表面がペコペコヘコんでいて、その下の筋肉が
しばらくフニャフニャした過弛緩の状態になっていて、奥に筋肉が過緊張した硬い
シコリがあるという形状をしている(図1)ことが多いです。

画像の説明図1

皮膚表面がペコペコしているし、その下の筋肉がフニャフニャした過弛緩の状態に
なっているので、その表面の部分の皮膚はズレやすいわけです。

 ですから探すときには、だいたい見当をつけたあたりでいちばんペコペコしてヘ
コみやすいところ、皮膚の下の筋肉がフニャフニャと過弛緩したところを探すのが
コツです。鍼灸をするときにはツボの範囲を直径1~2mmに特定する必要がありま
すが(大きなツボでは直径5mmでもよい場合もある)、皮膚の操体の場合には、指
でする場合にも直径1cmぐらい、手のひらでする場合には直径3~5cmぐらいに特定
できれば充分です。だいたいこのあたりだと思ったら、少しずらしてみて皮膚がズ
レやすいか確かめておきます。

 手のひらで皮膚の操体するときのように場所が広めのときには、その姿勢や動作
では皮膚があまっている感じを受けるところも皮膚がズレやすいことが多いです。
このあたりもなれてくると、なんとなく見当がつくのですが、初めのうちはわから
ないでしょうから、だいたいこのあたりかなというところを実際に手で触ってみて
ズレやすいところを探すようにしてください。狭いところよりは探しやすいと思い
ます。

 鍼灸のツボ探しよりも簡単とはいっても、慣れないうちは難しいし、場所が違っ
ていると、手の貼りつけ方やずらし方を工夫しても効果が出にくいことが多いので、
よく練習して、場所が特定できるようになってください。


II)皮膚がピッタリ貼り付いた感じにしてからずらしやすいほうにずらす †
 皮膚の操体する場所が決まったら、次は、皮膚の操体をするところに操者の手の
ひらや指をピッタリ貼り付いた感じにつけます。このコツは、皮膚の場所によって
少し違います。小さめのツボの上の皮膚をずらすときには、ツボの上の皮膚に指の
腹などを当てたら、まずほんの少し沈ませます。ツボの上の皮膚はフニャフニャと
たるんでいることが多いので、少しツボのほうに指を沈ませるとツボの上の皮膚に
ピッタリ貼り付いた感じになるし、しっかり皮膚をとらえることができますが、筋
肉に押す力が伝わるようでは押しすぎです。しっかりふれている、ピッタリついて
るのだけれど押す力が加わっていない程度がちょうど良いです。そういうふうにで
きると、皮膚をずらそうとしたときに操者の指や手のひらが受け手の皮膚の上を滑っ
てしまってずらせないこともなくなるし、受け手が圧迫されて痛みを感じることも
ないです。そして、そのうえに、ピッタリ張り付いた感じそのものにイイ感じを感
じてもらえることが多くなると思います。

 広めでもずらそうとする皮膚が平らな状態なら、やはり少し沈める感じが良い場
合が多いです。この場合にも手の平を広く貼りつける感じが出るとピッタリ皮膚が
ついてずらしやすいですし、イイ感じも増える場合が多いです。

 腕や足、手足の甲などの丸みをおびた皮膚をずらす場合には、手のひらを丸くし
指も軽く曲げて腕などをピッタリと包み込むように、できるだけ広い範囲で手のひ
らが腕などの皮膚に触れるようにすることです。そのほうが皮膚同士がピッタリつ
いた感じがしてずらしやすいですし、受け手もイイ感じを受けることが多いです。
 子供などの熱をおでこで測る場合に手の当て方と同じです。おでこで体温を測る
ときには、手のひらだけつけて指が反っていたり、指先だけ触れて手のひらが浮い
ていたりしたら測りにくいですね。おでこを手のひらや指で包み込むようにして、
出きるだけ広い範囲がおでこにふれるようにすると測りやすいし、そうしていると
思います。

 そういうピッタリ皮膚がついた状態から皮膚に平行に四方八方に皮膚をずらして
みて、いちばんずらしやすい方向を見つけます。いちばんずらしやすい方向がイイ
感じのことが多いですが、違っていたらイイ感じのほうを選びます。イイ感じが分
からないことも結構多いのですが、その場合にはいちばんずらしやすいほうを選び
ます。四方八方以外では、時計回りと反時計回りに皮膚を少し捻転するのがよいこ
ともあるので、四方八方でイイ感じがないときなどに試してみてください。


III)ずらしたあとの皮膚の張りを保つ †
 皮膚の操体のもうひとつのコツは、ずらしたあとの状態です。ずらした後ろの皮
膚が軽くピンと張った状態がイイ感じなことが多いです。ピント張りすぎて痛かっ
たり辛かったりしたら張りすぎですが、張られてなくてタルんでいるようではイイ
感じは出てきません。受け手の方と相談しながらイイ感じになるようにしてくださ
い。自分の皮膚をずらしてみて、どのぐらいがイイ感じがするかもよく練習し確か
めてください。

 そして、皮膚の操体をしているあいだずっと、そのずらしたあとの皮膚がピンと
張った状態を一定に保ち続けることが大切です。張ったりユルんだりすると、ユル
んだとたんにイイ感じが消えます。これは皮膚の操体をされているときには受け手
にははっきりわかることが多いです。それでユルんだときには受け手に声をかけて
もらうなり手をあげてもらうなり、なんらかの合図を送ってもらうことにしておく
とよいと思います。

 皮膚の張りを保つためには、皮膚をずらしているところとツボをさかいに反対の
位置の皮膚を反対の方向にほんの少しずらすようにするといいことが多いです。で
すから、指で皮膚の操体をするときには、張っている以外の指を反対側に支える感
じにおくと良いです。また、あとから膝裏シコリとりの皮膚の操体のところで説明
するように鍼の押し手を少し広げた感じにする方法がうまくいくことも多いです。

 手のひら全体で皮膚の操体するときに皮膚の張りがゆるまないためには、やはり
反対側の手で皮膚を張ろうとするところの反対側の皮膚をほんの少し逆にずらして
もよいですが、手がふさがっていたりして、そういうふうにできないときには、肘
の位置を考えたり肘を他の手や膝で支えたりするだけでも皮膚の張りを保ちやすく
なることもあります。いろいろ工夫して、皮膚の張り具合が保てるようにしてくだ
さい。それができるようになると、安定して効果が出せるようになります。


2.仰向け膝立てで、皮膚の操体 †
 「(1)ラクな寝方を強調する方法」で書いたように、ラクな姿勢を強調する方
法では、寝ている姿を見て、もっとも伸びようとしているラインと縮もうとしてい
るラインをみつけるのが基本なのですが、仰向け膝立ての姿勢がラクな場合には伸
び縮みラインがわかりにくいので、動きの操体を皮膚の操体にしていく方法で説明
します。仰向け膝立ての姿勢からは、膝裏シコリ取りのつま先反らし、膝倒し、踵
踏み込みと、ほぼ同じ効果を皮膚の操体で出す方法を説明します。


1)つま先反らし代わりの皮膚の操体 †
 この場合にも、まずは、膝裏のシコリをみつけ、指がシコリに当てられることが
大切なので、前回を参考にできるようになってください。まずは、うつ伏せで膝裏
をよく観察することが大切です。膝裏のシワの外端の2~3cm下腿側に多いことも
思いだしてください。


I)膝裏のシコリの上の皮膚をずらす †
 それで、膝裏のシコリを取るための皮膚の操体としては、まず直接シコリの上の
皮膚をずらしてみることが考えられます。シコリの上の皮膚をずらしやすいほうに
ずらします。この場合に、シコリがピンポイントでわかった場合には指腹で皮膚の
操体をしてもよいですが、シコリを中心に脹ら脛全体を包み込むように手のひらを
当ててもよいです。どちらの場合にも皮膚がピッタリついた状態にしてからずらし
ます。

 たぶん多くの場合には、膝裏のほうにズレやすいし、イイ感じのことが多いと思
います。いちばん出ている可能性が高い、膝裏シワ外端の脹ら脛より小指側のシコ
リの上の皮膚は、脹ら脛の筋肉に平行な動きの場合、足首のほうよりも膝のシワの
ほうに動きやすいと思います。そして、そこのシコリの上の皮膚には、脹ら脛の筋
に直角なずらし方の場合には、より外側にズレやすくなる可能性が高いです。それ
で、仙台の今先生がよく指導されているように、正座がしにくい場合に脹ら脛の皮
膚を外側にずらしながら座る(写真1)と正座ができるようになるわけです。
画像の説明写真1

 膝裏シコリをずらしながら、片手で指反らしという組み合わせも効果が上がりや
すいです。この場合、膝裏シコリが外側(小指側)なら小指か4指を反らし、内側
(親指側)なら親指を反らします。


II)足甲とアキレス腱の皮膚をずらす †
 膝裏シコリの上に皮膚でなくても、皮膚の操体をして膝裏のシコリをゆるめるこ
とができます。たとえば、つま先反らしの動きの操体を皮膚の操体で、そのまま置
き換えてみるとしたら、つま先反らしをする代わりに、その足の甲の皮膚を足首の
ほうに、アキレス腱あたりの皮膚は踵のほうにずらすとよいことが多いです
(写真2)。
画像の説明写真2
そのずらしを大きくすればつま先をあげる動きになりますから。このときのコツは、
手のひらを丸くし指も軽く曲げて足の甲を包み込むように、ピッタリ皮膚をつける
ことです。

 片手で膝裏のシコリをズレやすいほうにずらしながら、片手で足の甲の皮膚をズ
レやすいほうにずらすという組み合わせでもよいです。


III)対角の肘裏の皮膚をずらす †
 膝裏のシコリと対角反対側の肘裏の皮膚をずらしても、膝裏のシコリを取ること
ができます。左足膝裏の脹ら脛より小指側のシコリなら、右手の肘の手のひら側で
前腕より小指側の部分にシコリがある(写真3)ことが多く、そのシコリに皮膚の
操体をすると、膝裏のシコリがゆるみます。
画像の説明写真3

 皮膚の操体の仕方としては、膝裏と同じようにズレやすいほうにずらすことがま
ず考えられます。この場合には、肘よりに、外よりにズレやすいことが多いです。
手首よりや肘の中心よりにはズレにくいということです。膝裏のズレ方と似ている
ため、膝裏のズレ方が違う場合には違うこともあるので、膝裏のズレ方も参考にし
ながら、ズレやすい方向を見つけてください。

 肘の手の平側のツボは細かいので、皮膚の操体といっても四方八方に皮膚をずら
す方法ではなくて、ツボの上の皮膚を張る方法がよい(写真4)ことも多いです。
画像の説明写真4
ツボが細かいときにはズレやすいほうにずらす方法よりもツボの上の皮膚を張りや
すく、やっている最中に張り方がブレにくいので効果が上がりやすくなります。

 鍼をしている人なら、ツボを取った後に押し手を作り、その押し手をツボ上の皮
膚を少しピンと張る感じに押し手の親指と人指し指を離す(写真5)のがやりやす
いと思います。
画像の説明写真5
そして、関連する手指を反らしたりすることを付け加えると効果が上がりやすくな
ります(写真6)。
画像の説明写真6

 ツボの上の皮膚を広げる方法としては、押し手を広げる以外に中指と薬指(人指
し指)を使って、指同士の間を広げるというやり方でもできます。

 このツボ上の皮膚を張る方法、とくに押し手を広げるだけで、肘付近の陰経側の
ツボを使って、お腹のシコリをゆるめることも可能なので、ビックリする人もいる
かもしれません。刺鍼のときには押し手も重要なんだと再確認できますので試して
みてください。皮内鍼などでも変わるのでそれと同じだと考えればあまりビックリ
されないかもしれませんが。

 上下反対側の同じ側、つまり、左手での肘の手の平側前腕より小指側の部分にシ
コリがあれば、そこに皮膚の操体してもよいですし、左右反対側の右足膝裏の脹ら
脛より小指側の部分にシコリがあれば、そこに皮膚の操体してもよいです。丁寧に
するときには、対角、上下、左右の順で近づいていくと効果が上がりやすいです。
この対角、上下、左右の順で体の対称点を皮膚の操体していく方法は、足首の捻挫
などのときによく使われます。


IV)そのほか、いろいろ †
 そのほかいろいろなことが考えられます。たとえば、「?)足甲とアキレス腱の
皮膚をずらす」と「?)対角の肘裏の皮膚をずらす」を組み合わせて、対角の手の
甲と前腕の手のひら側の手首近くの皮膚をずらしてもよいかも知れません。いろい
ろ試してみるとおもしろいと思います。


V)臨床の場での割合 †
 私の場合、いま臨床の場で膝裏のシコリを取る場合には、膝裏のシコリを少し痛
くして逃げてもらい膝頭を胸や床に近づけていく動きの操体をすることのほうが比
較すれば多いですが、大きな動きを好まない人が増えているので、今後膝裏のシコ
リも皮膚の操体の割合が増えていく可能性があるなと思っています。


2)膝倒し代わりの皮膚の操体 †
 これにも、何通りか方法があります。


I)倒した大腿部の皮膚をずらす †
 いちばん簡単なのは、仰向け膝立ての姿勢から左右に膝を倒してみて、どちらか
ラクに倒れるほうに軽い力で倒れる範囲で倒してしまい、倒した足の大腿部上側の
腰よりの皮膚を膝のほうにずらすだけです(写真7)。
画像の説明写真7
息が深くならないようならその大腿部の下になっている内側の皮膚を足の付け根の
ほうにずらすのを付け加えてもよいと思いますが、大腿上側をずらすだけで充分な
ことが多いです。私はいま臨床の場で膝倒しをするときには、もっぱらこの大腿上
側の皮膚をずらすことをしています。片手があきますので、受け手に応じて、いろ
いろ付け加えることができて便利ですし、受け手の評価も動きの操体よりも高いで
す。

 付け加えるとしたら、別の方法もあります。前回の動きの操体で書いたように、
この場合には、だいたい、腰椎を境に捻れるようになるタイプと前屈するタイプの
二通りになります。

 捻れるタイプのときには、腕と胸の境目が上を向きますから、そこの皮膚をズレ
やすいほうにずらします(写真8)。
画像の説明写真8
大腿部と並行で向きが反対の場合が多いと思います。

 前屈タイプのときには、肩や肩甲骨の外側が上を向きますから、そのあたりの皮
膚をズレやすいほうにずらします(写真9)。
画像の説明写真9
大腿部と並行で向きも同じ場合や、体全体が丸まる形に近づくような向きが多くな
ります。


II)脇腹や背骨近くの皮膚をずらす †
 脇腹の皮膚をずらすだけで膝倒しと同じ効果を出すこともできます。捻りタイプ
の場合には、上になった脇腹の骨盤に近いほうの皮膚を大腿部と平行で膝のほうの
向きにずらし、肋骨に近いほうの皮膚をそれと平行で向きが反対側にずらすだけです(写真10)。
画像の説明写真10
何も説明しないでこれだけすると手品みたいですが、要するに体には同じような刺
激が加わったという情報が伝わるので効果が出るだけです。胴体の大きな動きをす
るときには腰椎をいちばん動かしています。胴体を捻るときには、脇腹から腰椎
(特に第3腰椎)の部分で捻っています。ですから、腰椎には肋骨や骨盤がついて
いないわけです。膝倒し捻れタイプのタワメの間では、上になった脇腹部分が肋骨
よりと骨盤よりでは正反対の方向に動いています。それで、上に書いたような皮膚
の操体をすると胴体を捻ったと同じ効果が出るわけです。

 前屈タイプの場合には、背骨よりの皮膚を使います。そのあたりの骨盤よりと肋
骨よりの皮膚を前屈の動きにつながるようなずらし方をします。第3腰椎~仙骨の
上になっている側を大腿のほうにずらし、肩甲間部の上になっている側を肩のほう
にずらすことが良い場合が多いです。どちらの手もやや天井よりの方向も付け加え
たほうがイイ感じが増えることが多いです。両方の手のずらしていく方向を延長す
ると円になるようなイメージが描けるともう少しイイ感じが増えるようです。それ
に、やや天井よりの方向を付け加えると、受け手の体の上側の部分に床のほうに近
づいていく回転を感じてもらいやすいのもイイ感じが増えやすい理由かも知れませ
ん。


3)踵踏み込みを皮膚の操体で †
 この操体は、動きの操体で書いたように、実は、肩のほうに体重を移していく重
さの操体なので、それつながるような皮膚ずらしをします。たとえば、胸の上部の
皮膚を鎖骨のほうにずらしたり(写真11)、
画像の説明写真11
お尻近くの皮膚を膝裏のほうにずらしたりしてみるとよいと思います。

 長くなりましたので、続きは来月にします。

>>>つぎへ>>>術伝流操体no.16

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