和方養生技術伝承塾~鍼灸・操体実践講座~ 急性期から慢性期まで患者さんが喜ぶ技術を伝承します

術伝流操体no.14

2. 仰向けから、足をきっかけに †

3)仰向けで膝を立てない姿勢から †
 それで、つぎは、膝を立てない状態の方がラクな姿勢の場合に移ります。じつは、
実際の臨床の場で、ラクな姿勢を強調するアプローチで操体をしていく場合には、
はじめの姿勢は横向きかうつ伏せになることが多く、そういう姿勢から操体をして
仰向けになった場合には、膝裏などのシコリは取れてしまっていることが多くなり、
仰向けになった場合に膝立ての方がラクということは少ないようです。膝裏にシコ
リがあるので、そこを縮ませるのがラクだから、膝立てがラクな姿勢になるのだと
思います。

 考えてみれば、仰向け膝立てというのは、そんなに自然な姿勢ではないのかもし
れません。仰向け膝立てから操体をしていくと、横向きにちかい姿勢になったり、
途中でうつ伏せになったりすることがよくあることから考えても、本来は、横向き
やうつ伏せの方がラクなのかもしれません。


1.足の曲げ具合と治したい経絡 †
 足を片方だけ伸ばして、片方は立てないけれど曲げた姿勢がラクというのは、よ
く見かけます。これは、経絡的に見るととても面白い現象で、曲げている足の曲げ
ている角度によって、体が、いま治したがっている経絡がほぼ予測できます。
踵が反対側の足の足首近くのときは足太陰(写真12)、
画像の説明写真12
踵が膝近くのときには足厥陰(写真13)、
画像の説明写真13
踵が大腿付け根近くのときには足少陰(写真14)
画像の説明写真14
である可能性が高くなります。それぞれ、そういう姿勢で伸ばしたがっている部分
の経絡を治したがっている可能性が高いわけです。この場合にも、もちろん曲げて
いる足の膝裏にもシコリはあると思いますが、同じ膝裏ちかくでも足の曲がり具合
によって、上に書いた治したがっている経絡上にツボやシコリが出ている可能性が
高くなります。


2.曲げている足の上側を伸ばす  †
•こういう片足曲げて、片足伸ばしている場合には、曲げている方の足の伸ばした
がっているライン(とくに、大腿部)をより伸ばす操体がイイ感じなことが多いで
す。膝を床などに近づけたり(写真15)、
画像の説明写真15
踵を少し持ち上げたり(写真16)、
画像の説明写真16
踵が持ち上がっていくような足首捻りをしたりです。
•そういう強調を少しして、息が深くなったり、イイ感じが増えていくようなら、も
う片方の足や手、首などをイイ感じが深まるようにゆっくり動かしてもらいます。
辛かったりしたら止めます。もう片方の足は伸ばしたり、伸ばすのがラクになるよ
うに足首を捻ると気持ち良さが深くなる可能性が高いです。両手を胴体の横に置い
ている場合には、足を曲げている側の手は、小指が手の平側に回る手首捻転、反対
側の手は小指が手甲の側に回る手首捻転で気持ち良さが深くなる可能性が高いです
が、手の場合には、おいている位置や方向によって変わることがあるので、目で見
て窮屈な感じがないか確かめながら、言葉の通じる方なら会話で確かめながら、気
持ち良さが深まるようにしていくとよいでしょう。
•受け手は強調しているところを支えにして動いていきますから、強調しているとこ
ろが緩んだり、逆に強過ぎたりしないように、ヤジロベエ感覚でちょうどよい状態
を保つように注意してください。受け手が気持ち良さを感じられなくなったり、腹
へ深く入っていた息が普通に戻ったり、受け手が大きく姿勢を変えたり休みたくなっ
たりしたら終わりにしてよい合図です。受け手にそのとき感じられるラクな寝方で
休んでもらいます。臨床の場では、そのラクな寝方を強調する次の操体に移ります。
•また、仰向けに寝て足を両方とも曲げて倒した姿勢がラクな方には、片足ずつ、大
腿部上側を伸ばすことをきっかけにする操体をします。足の曲げ具合が両方同じで
足の裏を合わせるように近づけている人には、両方同時にやった方が気持ち良いと
いう人が多いようです(写真17)。
画像の説明写真17
•この操体を一人でするときには、曲げている足の踵の下に座布団をたたんだものや
クッションを入れて少し持ち上げます(写真18)。
画像の説明写真18
また、尻を少し高くしてから膝に座布団2~3枚や毛布をたたんだものなどを乗せて
もよいと思います。反対側の足や首や手をイイ感じになるようにゆっくり動かして
気持ち良さが深くなるように工夫します。

3.足を伸ばしていても †
•どちらか曲げて、どちらか伸ばしていればすぐにわかりますが、初めは両方とも
伸ばしていることの方が、操体に慣れていない人には多いです。こういう場合でも
前回(no.13の「 2.仰向けから足をきっかけに」の項目中の「1)足を伸ばすか膝
立てか」で書いた方法で、とくに足先を同じ力で動かしてみて動きやすいところが
親指側だったときには、足はほんとうは曲がりたがっていることになります。足の
親指と第2指の間の水掻きをつまんだり、足の親指裏のシコリをつまんで、少し痛く
して逃げてもらうといくらか逃げたところでシコリの痛みが少なくなります。その
ときの曲げ具合が、そのときの体にとってラクな姿勢であることが多いです。その
姿勢から、曲げている足の大腿部上側を伸ばす操体をすると、気持良さを味わって
もらえることが多いです。

4.伸ばしている足を伸ばす †
•次は足を伸ばしたがっている場合です。足先を同じ力で動かして小指側がよく動
く足は伸ばしたがっています。定番の操体では、仰向けで足を伸ばしている姿勢か
らは、足首のところで足の長さを比較して、長い方の足の踵を受け手に突き出して
もらい、操者がそれに抵抗するという方法でします。ラクな寝方を強調する方法で
は、より伸ばしているように見える足を操者が引っぱることをきっかけにします。
•伸ばし方には、定番と同じように踵を突き出すように伸ばす方法と、足の親指を足
裏側に回す足首捻転をしながら伸ばす方法があります。踵を突き出す方は足裏を伸
ばすことになり、足首捻転をしながらの方は足の表側(腹側)を伸ばすことになり
ます。どちらがよいかは、受け手に聞いてみてもよいですが、言葉の通じない人の
場合には、足首を立てている感じのときは踵突き出しがよいことが多く、足首が寝
ている感じのときは足首捻転の方がよいことが多いです。また、軽く足を反らして
みた感じと軽く捻ってみた感じをくらべてみる動診をしてもわかります。軽い力で
動く方がよいことが多いです。

5.足裏を伸ばす †
•踵を突き出すように足を引っぱる場合には、まず踵の下に手を入れて軽く引っ張り
ながら少し横に動かして、どの方向が引っ張りやすいか調べます。足裏を伸ばす場
合には、高さは床にスレスレがよいことが多いので、おもに、胴体との角度を閉じ
気味にするか開き気味にするかで方向を決めていきます。足が胴体から抜けてくる
ような感じのところがよいことが多いです。言葉の通じる人には2つか3つの方向を
いって、一番イイ感じのする方向を決めてもらうとよいと思います。
•方向が決まったら、少し足首を反らす方向で足首を決めてから踵の骨に手の小指
側を引っかけるように当てて、足裏を伸ばします(写真19)。
画像の説明写真19
◦小指側を反らした方がよいときと親指側を反らした方がよいときがあります。言葉
の通じる人なら両方試して聞いてもよいですが、少ない力で反らせられる方がよい
ことが多いです。気持ち良さが感じられたり、腹に息が深く入るようなら続けます。
辛かったりしたら止めます。このときにも注意する点は同じで、反らしている踵の
反り具合をヤジロベエのように釣り合った状態に保つことです。長くなっても疲れ
ないように足首に当てている操者の手が床についているようにします。
•反対側の足や両方の手や首を気持ち良さが深くなるようにゆっくり動かしてもらい
ます。赤ちゃんなどには、操者の反対側の手で、反対側の足や届く方の手を動きや
すい方に動かしてあげます。気持ち良さを感じられなくなったり、腹の息が普通に
戻ったり、大きく姿勢を変えたくなったり休みたくなったりしたら終わりにしてよ
い合図です。受け手にそのとき感じられるラクな寝方で休んでもらいます。臨床の
場では、そのラクな寝方を強調する次の操体にいきます。

6.足表を伸ばす †
•足の表側を伸ばす場合には、胴体との角度だけでなく足の床との高さも関係してき
ます。足首を親指が足裏側の回るように軽く捻って固定し、まず、横、左右に動か
して引っ張りやすい方向を決めます。次に床スレスレがよいか少し持ち上げた方が
よいか足を引っぱる高さを決めます。
◦このときに、大腿の方向の延長線上に体が治したがっているところがあることが多
いです。肩が辛い場合には床スレスレの高さになりますし、腰が辛い場合には、3~
40cmくらいの高さになります。また、伸ばしている足と同じ側が辛い場合には閉
じ気味になり、反対側が辛い場合には開き気味になります。
•足首を捻る程度をヤジロベエの釣り合った状態に維持しながら、決めた方向に足を
引っ張ります(写真20)。
画像の説明写真20
◦気持ち良さが感じられたり、腹に息が深くはいるようなら続けます。辛かったり
したら止めます。反対側の足や両方の手や首を気持ち良さが深くなるようにゆっく
り動かしてもらいます。気持ち良さを感じられなくなったり、腹の息が普通に戻っ
たり、大きく姿勢を変えたくなったり休みたくなったりしたら終わりにしてよい合
図で、受け手にそのとき感じられるラクな寝方で休んでもらいます。
•以前は、この操体をよくしていたのですが、けっこう長いこと気持ち良さが続き操
者がくたびれてしまうので、このごろは大人にはあまりしません。これと同じ効果
のある皮膚の操体をすることの方が多いです。皮膚の操体のところで説明します。

3.仰向けから、首をきっかけに †
 さて次は、仰向けから首を動かすことをきっかけにする操体です。まず、首がほ
んの少しでも横に傾いていないか捻れていないか観察します。言葉の通じる人なら
首をあちこち動かして動かしやすい方向を決めてもらってもよいです。受け手の頭
の方に座り、操者の両手を受け手の首の下にいれて手のひらで後頭部をつつむよう
にしてから、ゆっくり決めた方向にほんの少し余分に動かしていき、軽い力では動
かなくなったところで止めます(写真21)。
画像の説明写真21

 その状態をヤジロベエの釣り合った状態に保ちながら、両手両足をイイ感じのす
る方に動かしてもらい、気持ち良さが深くなる姿勢を探してもらいます。辛かった
りしたら止めます。続けたい気持がしたり、腹の息が深くなったら続けます。気持
ち良さを感じられなくなったり、腹の息が普通に戻ったり、大きく姿勢を変えたく
なったり休みたくなったりしたら終わりにして、受け手にそのとき感じられるラク
な寝方で休んでもらいます。


1)首のシコリに指を当てながら †
•首にシコリがある場合には、基本的にそのシコリのあるところがもっとも縮むよ
うな方向が効果が出やすい方向になります。首を触って、シコリがわかれば自然に
方向は決まってきます。逆に、方向が決まったら、そのとき首の姿勢でもっとも縮
むラインのもっとも縮もうとしているところを探ると、奥の方にシコリが見つかる
と思います。そのシコリに軽く温めるような感じで指の腹を当てながら、首を動か
してもらうと、いくらか動かしたところで急にシコリがフッと消えます。膝裏のと
きと同じで、緊張してくる筋肉のなかに埋没するように消えていきます。そのとき
がちょうどよい動かし具合のところで、そのままタワメの間に入っていきます。
•ですから、シコリに指が当てられると確実に効果が出せるようになります。シコリ
の探し方を身に付けましょう。首のシコリは、まず、鎖骨の首側のくぼみに肩の方
から中指を入れて、首の根元に押しつけるように押して痛いところを探します。そ
して、そこから顎の方に筋肉の溝をたどっていき、ヘコんだ感じのところを押して
みて痛くて、奥が硬くなっているところを見つけます。首の後ろ側は、後頭骨下縁
の首側を探って、ヘコんで奥が硬いところを見つけ、そこから背中の方に筋肉の溝
をたどっていき、ヘコんで奥が硬く押して痛いところを見つけます。いくつか痛い
シコリが見つかったら、その中でいちばん痛かったり、イヤな感じのするシコリを
選びます。同じくらいのシコリが二つあったら、表面がズブズブしているシコリを
まず選びます。ズブズブしているシコリの方が古い可能性が高く、古いシコリをゆ
るめた方が少ない時間で効果が上がる可能性が高いからです。
•選んだシコリに指を当てながら首の操体をしていると、膝裏の場合と同じように、
その周りが温かくなったり、脈を打つようにドキドキしてくることがよくあります。
シコリやそのまわりの筋肉の血の流れがよくなったためで、しばらくするとシコリ
がゆるんでいきます。
•シコリがいくつかあったときには、次にイヤな感じのするシコリを選んで、シコリ
に指を当てて、その部分が縮むような動きをきっかけにする操体をしていきます。

2)首の操体は首から上の症状に効く †
•橋本敬三先生が書かれているように、首の操体は首から上の症状に効果があります。
首から上の症状があったら、試しにやってみるとよいと思います。症状の出ている
患部を触らないでも、意外な症状にも効きます。先日も、顎関節症の人に軽く足も
み足ゆらしをしたあと、首の操体をしたら、それだけで、顎関節症がなくなってい
ました。
•ただし、下半身の歪みがひどいと消えにくいし戻りやすいので、下半身の歪みを取っ
てから、とくに、膝裏のシコリを取ってからするとよいと思います。でも、寝方を
強調するアプローチの場合には、言葉の通じる人なら、首のシコリに指を当てて首
を少し曲げたり捻ったりした状態から、声をかけて膝たおしや足首そらし、踵つき
だしなどの中からイイ感じのする動きを選んで、その操体をしてもらうこともでき
ます。そうすると、首のシコリに関係する下半身の歪みは消えやすいので、それだ
けで、効果が出ることが多くなります。とくに、操体に慣れている人で辛い症状が
首から上の場合には、仰向けに寝てもらってすぐに、首のシコリに指を当てて首の
操体をしながら足の操体をしてもらうと、それだけで、辛い症状が消えることがよ
くあります。これは、首のシコリに指を当てていると、下半身の動きの操体がうま
く決まりやすいためだと思います。
•そんなわけで、言葉で書くと簡単だし、練習もそんなに大変ではなく、簡単に感じ
るかも知れませんが、シコリの見つけ方や曲げ具合、捻り具合、ヤジロベエ感覚、
声のかけ方などをしっかり身に付けて、また工夫していきましょう。そうすれば、
思いがけないほど効果が上げられます。

4.おわりに †
 前回の前編と今回の後編の2回にわたって、仰向けからの動きの操体をラクな寝方
を強調するという視点から解説しました。次回は、仰向けがラクな寝方の場合の皮
膚の操体と重さの操体です。皮膚の操体では、今回の動きの操体とほぼ同じ効果の
皮膚の操体を取り上げていきます。

>>>つぎへ>>>術伝流操体no.15

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