和方養生技術伝承塾~鍼灸・操体実践講座~ 急性期から慢性期まで患者さんが喜ぶ技術を伝承します

術伝流操体no.13

1.はじめに †
 前回は「ラクな寝方を少し強調」する操体をおおまかに説明しました。今回から
は、寝方別にくわしく説明していきます。まずは、仰向け寝での動きの操体です。
定番は、足をきっかけにするものでは、膝を立てた姿勢からのつま先上げ、踵ふみ
こみ、膝たおしと、足を伸ばした姿勢からの踵つきだし。あとは、頭の方から首の
捻転と側屈です。


2.仰向けから足をきっかけに †
 まずは下半身から。言葉が通じる人だったら「操体は無理なことはしません。辛
い格好で操体を受けたら辛いと思いますから、ラクな格好で寝てみてください。ラ
クな姿勢に寝てもらうと、歪みがわかりやすいのでツボが見つけやすくなりますし、
効果の出やすい操体も見つけやすいです。体は自然と歪みの現れやすい格好をしま
すから。それにラクな姿勢で寝ていた方が操体をしているときに気持ち良さが味わ
いやすいと思います。仰向け、うつ伏せ、横向きで寝てみて、どれがラクか試して
ください。横向きはどっちを上にするとラクか両方試してください」とか声をかけ
ます。言葉が通じない人が相手なら、寝ている姿勢をよく観察します そして、そ
の結果が仰向けだった場合の動きの操体を解説していきます。


1)足を伸ばすか膝立てか †
 足を伸ばしたがっているか、曲げたがっているかがわかれば、膝立てか足伸ばし
か、どちらの姿勢で操体を始めるかわかりますが、「ラクに寝てください」といっ
ても普通は足を伸ばしたまま寝ていることが多く、よほど操体慣れしている人でな
いと、膝立ての姿勢がラクだといって、膝立ての姿勢で寝ていることはありません。
言葉の通じる人なら「ためしに膝を立ててみてください。足をまっすぐ伸ばしてい
るのと、膝を立てているとどっちがラクですか」と声をかけてラクな姿勢から始め
ます。

 ただ、あまり声をかけてほしくなさそうなら、声をかけずに体が足を伸ばしたがっ
ているか曲げたがっているかを判断する必要があります。それには、伸ばしている
両足の踵から先を見ます。とくに小指側が倒れた感じで床や畳に近づいているとき
には足を曲げたがっていることが多く、小指側が床に対して立っているような感じ
のときには足を伸ばしたがっていることが多くなります(写真1)。
画像の説明写真1
とくに、親指側が床に近づいているときには足を伸ばしたがっていることが多いです。

 動診も可能です。親指側と小指側、左右全部で4カ所を指で軽く動かしてみます。
同じ力で動かしてみて、もっとも動きの大きいところを見つけます。それが、親指
側なら足を曲げたがっているし、小指側なら足を伸ばしたがっている可能性が高い
です。足首を捻る動きを大きくしていくと、足を曲げる動きや伸ばす動きになるか
らです。もちろん左右で違うことも多いです。動きの大きい側の足を選び、その足
の親指側だったら、その足を膝立ての状態にした姿勢を選び、小指側なら足を伸ば
した姿勢を選びます。

 また、足を反らせる動き(背屈)と反対の動き(底屈)を比べる動診もできます。
これも軽く動かしてみて比べ、反らす動きが大きそうなときには足を曲げたがって
います。そちらの膝を立てた姿勢が楽なことが多いです。

 膝立てがよさそうなときには、言葉の通じる人には「膝立てがよさそうなので膝
立てから始めさせてください」と頼んでみてもよいです。

 また、たくさん言葉をかけてほしそうな人なら「足の指裏は経絡の末端で、体の
歪みがよく出るところですから、ちょっと調べさせてください」と声をかけてから
足の指揉みをしてみて、シコリが見つかったら、「ここ痛そうですね。ここに関連
する歪みはここを少し痛くして逃げた姿勢だととれやすいので、ちょっと痛くしま
すから逃げてみてください」といってから、痛くして逃げてもらうと、足を曲げて
逃げるので、止まったところで「ここまで足を曲げると、指裏を押してもあまり痛
くないでしょう」と聞いて確認をとり、「それで、こういう姿勢から操体した方が、
この指裏に関係する経絡が整いやすいので、体の歪みが取れやすいんですよ」と説
明してから踵をおろすと、膝立ての姿勢になります。「反対側の足は伸ばしたまま
のほうがラクですか? 反対側も曲げた方がラクなら反対側も曲げてください」と
声をかけて曲げてもらいます。

 言葉が通じない人でも、足の指裏を揉めば、痛いときには曲げて逃げようとする
ので、それで、どの姿勢からの操体をするか決めていくことはできますが、あまり
痛くすると操体をすること自体を拒否されてしまうので、軽く触って、どこにシコ
リが出ているかわかるようになってください。


2)仰向け膝立ての姿勢から †
 さて、そういう感じで、もし、仰向け膝立ての姿勢がラクそうな寝方になったと
きには、定番の操体は、膝たおし、つま先そらし、踵ふみこみの3つです。まず、つ
ま先そらしですが、古い定番のやり方だと、受け手に声をかけて、つま先を反らし
てもらい、それに対し操者が足の甲に手をかけて抵抗する形を取りますが、私は、
現在では、そういうやり方はあまりしていません。よほど操体慣れしている人でな
いとうまく全身に連動できないので、気持ち良さを味わいにくいからです。


1.膝裏のシコリの痛みから逃げる †
 私が現在やっている方法は、立てた膝の膝裏を探ってコリを見つけたら、それを
少し痛くして「ここ痛いですね」とコリを確認すると、少し逃げるように足を動か
そうとするので、その動きにのるような感じで足を動かしてついていきます。コリ
を押さえていない方の手で、その足の足首から先を持っていると追いやすいです。
フワーッと軽い力で膝が曲がって動いていくほうに、足首を反らしながら追ってい
きます。ある程度逃げたところ、いいかえれば、ある程度膝が曲がったところで、
急にコリが消えます(写真2)。
画像の説明写真2
緊張してきた脹ら脛の筋肉の中に埋まっていくような感じで消えていきます。言葉
が通じる人には「この姿勢になると膝裏のシコリが痛くなくなったでしょう。しば
らくこの姿勢を続けているとシコリが消えやすいんですよ。もし、この姿勢が辛かっ
たり、イヤな感じがしたら止めますので言ってください」と声をかけるとよいと思
います。言葉の通じない人ならイヤそうな表情をしたり、押し返そうとしてきたり
したら止めます。そして、その姿勢を維持してあげると、息が深くなり、気持ち良
さも出てきて、しばらくして戻すとコリが消えているか、少なくとも押したときの
痛みが少なくなっています。

 確認するときにどうせ少し痛くするので、そのまま、こういう形で痛みから逃げ
る操体にもっていけば、初めての人でも、すんなりとタワメの間になれるので、こ
ういう方法をとっています。

1.膝裏のシコリの見つけ方
◦前にも書いたと思いますが、膝裏のシコリは真裏よりも脹ら脛よりに出ているこ
とが多く、膝裏のHの字型のくぼみの端の四隅の方が真ん中あたりよりも可能性が
高いです。一番出やすいのはHの字のくぼみの小指側で脹ら脛よりの端、二番目が
親指側で脹ら脛よりの端、三番目が真ん中で脹ら脛よりになります。練習のときに
は、うつ伏せで膝裏を出してもらい、Hの字の形のくぼみを確認し、その端を押し
てツボが出ている(写真3)ことを確かめてから、仰向け膝立ての姿勢からツボを取
ると見つけやすいです。
画像の説明写真3
両方の中指を上向きにして膝裏のHの真ん中あたりに入れ、まず指を曲げてHの縦
線まで滑らせてきてから、中指を操者自身の方に向けて、つまり、少し脹ら脛より
に指をズラしてから押すと、だいたいHの脹ら脛よりの端になります。
2.膝裏シコリ操体のコツ
◦膝裏のシコリの痛みから逃げてもらう操体のコツは、シコリが足の外側
(小指・外踝側)にあったときには足の甲の小指側を反らす(写真4)ように、
画像の説明写真4
シコリが足の内側(親指・内踝側)にあったときには足の甲の親指側を反らせる
(写真5)ようにすることです。
画像の説明写真5
◦もう一つのコツは、前回説明したように、受け手に操者が手を触れていないところ、
反対側の足や両手、首などを少しずつ動かして、もっとイイ感じが味わえる格好が
ないか探しながら動いてもらうことです。そうすると、全身に連動していく気持ち
良さを味わってもらいやすいです。
◦膝裏のしシコリから逃げてもらう操体では、操者はすでに両手を使っていますか
ら、言葉の通じる人には声をかけて動いてもらいます。前回説明したように、初め
ての人や言葉かけが少ない方がよさそうな人なら、手を左右交互に頭の方に上げて
もらい、どっちがイイ感じか聞いて、イイ感じのする方の手をしばらく上げたまま
にしておいてもらいます。言葉をたくさんかけてほしそうな人だったら、上げた手
や下げた手の手首を捻ってもらったり、首や伸ばした足の足首をどちらかを捻って
もらったりを順に言葉をかけて誘導していきます。
■あまり自分で動きたくなさそうだったら、首を左右に捻ってもらうくらいの方が
よいかもしれません。慣れてきたら、受け手をよく観察して、窮屈そうなところや
わずかに動かしたところを見つけて、そこを動かすように言葉かけをすると、あま
り自分で動きたくなさそうな人でも動いてくれる可能性が高くなります。動いて姿
勢を変えると気持ち良さが深くなる感覚を一度味わってもらえると、次からは積極
的に言葉かけをして動いてもらっても不満を口にされることは少なくなります。
3.不自然なところを見つける
◦前回も少し書きましたが、私は実際に臨床の場で初めての人に操体をするときに
は、タワメの場での受け手の様子を観察して、受け手の体が不自然に、窮屈そうに
見えるところを見つけ、はじめにそこを動かしてもらうように言葉かけをすること
が多いです。「そこの手はそのままの方がイイ感じですか? 手を下ろしたままよ
りも頭の方に上げた方が気持ちよさそうなんですが。ためしに上げてみてください。
もし、上げた方がイイ感じなら、しばらく上げたままにしておいた方が、気持ち良
さが深くなると思いますし、効果も出やすいです」みたいな感じで。そういうとこ
ろは受け手の体も窮屈に感じている場合が多いので、初めての人でも、動いて格好
を少し変えると気持ち良さが深まっていく感覚を味わってもらいやすいからです。
気持ち良さが深まっていく感覚をいちど味わってもらえれば、次からは少し多めに
言葉かけをしても、動きたくなさそうにしていた人や言葉をあまりかけてほしくな
さそうにしていた人でも、イヤがらずに動いてもらえるようになります。そのため、
臨床の場で操体を使いこなしていくには、不自然に見える、窮屈そうに見えるとい
う勘を養っていくことが大切です。
◦さて、膝裏のシコリから逃げる操体の場合に、体にほかの大きな歪みがないとど
ういう格好が自然でしょうか? 右足の膝裏にシコリがあったときには、右手は体
の横に置き、左手を頭の方に上げた状態(写真6)がよいようです、
画像の説明写真6
■そして、右手は小指側が手の平側に回る手首捻転、左手は小指側が手の甲側に回る
手首捻転を、それぞれほんの少し付け加えると気持良さが深くなっていくと思いま
す。左足は右足よりも少なめに曲がり、踵で床などを押し込むようにし、右肩が少
し腰に近づくように側屈し、首や上半身は少し右に捻りながら反るような格好のタ
ワメの間になっていく可能性が高いように思います。今やって確かめてみたのです
が、私自身の体の別の大きな歪みに関係している可能性もあります。実際に動いて
確かめてみることをお勧めします。また、人によって歪み方が違うと連動が違う可
能性もあるので、目の前の受け手の格好から感じられる不自然さが少なくなるよう
に誘導してあげてください。
4.タワメの間の最中のコツ
◦きっかけにする右足膝裏のほかの手足や首・胴などの動かし具合が決まったら、
たぶんタワメの間に入っていくと思います。タワメの間では、まず、受け手の息が
腹に深く入った状態が続いているかに注意を払うようにしてください。そして、タ
ワメの間の最中でも受け手の体は、気持ち良さを求めて動いていくこともあるので、
シコリ側の足首の反らし具合が緩まないようにしながら追っていきます。受け手は
足首が決められていることを支えにして動いているので、足首が緩んでしまうと気
持ち良さが少なくなったり消えてしまったりします。また、あまり強く決めすぎて
痛く感じても気持ち良さは消えてしまいます。ヤジロベエのようにちょうどよく釣
り合った感じを保つようにしてください。
◦また、タワメの間の最中では、膝裏に当てた手に注意を向けていれば、膝裏が温
かくなったり、脈がとれたりというようなことが観察できるかもしれません。どち
らも膝裏の血の流れがよくなったためで、しばらくそういう状態が続いていると、
元に戻したときに、シコリが消えているか、あっても痛みが少なくなっている可能
性が高いです。
5.終わり方
◦受け手が気持ち良さを感じられなくなったり、腹へ深く入っていた息が普通に戻っ
たり、受け手が仰向けや横向きの形になって休みたくなったりしたら終わりにして
よい合図だと思います。受け手にそのとき感じられるラクな寝方で休んでもらいま
す。臨床の場では、膝裏のシコリの痛みから逃げる操体が終わって休んでいる姿勢、
そのときのラクな姿勢を観察して、その姿勢を強調する操体を次の操体に選んで施
術を続けていきます。
6.一人で膝裏シコリから逃げる
 この操体を一人でする場合には、両手の親指で膝裏の小指側と親指側のシコリを
押しながら足首を反らし、膝を胸に近づける(写真7)ことをきっかけにして、気持
ち良さが深くなる姿勢を探してゆっくり動いていきます。
画像の説明写真7

2.膝たおし †
 次は仰向け膝立てがラクなときのもう一つの定番、膝たおしです。定番のやり方
は、左右両側に倒してみてラクな方、気持ちの良い方を見つけて、受け手にそっち
に倒してもらい、それに対して術者が倒れてくる膝の横に手を当てて抵抗するとい
う形でした。ラクな寝方を強調するアプローチでは、まず、膝を立てている格好を
よく観察します。すると、たいていどっちかに傾いていますから、傾いている方に
倒していきます。言葉の通じる人なら「ちょっとこっちの方に傾いていますね。そ
うすると、こっちにもう少し倒した方がラクじゃないですか? もし、辛かったり
痛かったり、イヤな感じが出てきたりしたら止めますので、言ってください」とい
いながら、軽い力で倒れるぐらいまで倒していきます(写真8)。
画像の説明写真8
言葉の通じない人ならイヤそうな表情をしたり、押し返そうとしてきたりしたら止
めます。腹に息が深く入ってくるのを待ちます。

 それから先は、膝裏シコリの操体と同じで、手を上げてもらったり、手首や首を
捻ってもらったりして、気持ち良さが深くなる格好を探してゆっくり動いてもらい
ます。このときにも、不自然そう窮屈そうに見えるところから動いてもらうように
すると、案外すんなりと気持ち良さを深くしていく愉しさをわかってもらえます。

 タワメの間では、膝が浮いてこないように、また、逆に膝を押しすぎないように、
ヤジロベエがちょうどよく釣り合うような感じにすることに注意を払います。受け
手が気持ち良さを感じられなくなったり、腹へ深く入っていた息が普通に戻ったり、
受け手が仰向けや横向きの形になって休みたくなったりしたら終わりにしてよい合
図です。受け手にそのとき感じられるラクな寝方で休んでもらいます。臨床の場で
は、そのラクな寝方を強調する次の操体に入っていくのも、つま先上げのときと同
じです。

1.膝たおしのポイント
◦この膝たおしのときの体のほかの部分の動きは、基本的に胴を捻りたい人と丸め
たい人に分かれます。捻りたい人の場合には、倒れていくのと反対側の手の上腕を、
上になっている足の大腿部と平行にするか直行させる姿勢がイイ感じなことが多い
です(写真8、写真9)。
画像の説明写真9
平行というのは頭の方に手を伸ばして、上腕が大腿と平行になる姿勢で、直交とい
うのは体の脇に手を近づけて上腕の延長と大腿の延長が直角に交わる姿勢です。そ
して、直行する姿勢の場合には、その手の小指側が手の平側に回る手首捻転を付け
加えると気持ち良さが深まりやすいです。平行な場合も小指側を手の平側に少し回
してから腕を伸ばすとより気持ちよいことが多いです。丸めたい人は、上になって
いる肩も膝と同じ方に倒していきたい人が多く、手も胸の中に巻き込んでいくよう
な姿勢がよい人もかなりいます(写真10)。
画像の説明写真10
◦また、膝たおしの場合には、片手で膝が浮いてこないようにできますから、言葉
が通じない人や、自分で動きたくなさそうな人の場合には、もう片方の手で気持ち
良さが深まりそうな動きを作ってあげてもよいと思います。軽く動かしてみてもっ
とも少ない力で動いていく方向が良い場合が多いです。また、この場合には、二つ
の手の平に感じる感覚がヤジロベエの釣り合う感じにできるとうまくいくことが多
いです。
2.一人で膝たおし
◦この操体を受け手に一人でやってもらうときには、倒した大腿部の上に座布団2、
3枚やたたんだ毛布などをのせて膝が浮いてこないようにして、手や首をあちこち動
かしてイイ感じのする方向を決め、気持ち良さが深くなるように動いてもらうよう
にします(写真11)。
画像の説明写真11
■両手を使っているので、首を捻ったり、背中を曲げたり捻ったりという動作で気
持ち良さが増えていかないか試して、増えるようなことを付け加えます。座位で膝
立ての姿勢からもできます。

3.踵(かかと)ふみこみ  †
 仰向け膝立ての3つめは、踵ふみこみですが、これをした方がよいかどうかを寝た
姿勢の観察だけから決めるのは少し難しいです。それは実は、この操体が動きの操
体というよりも実際は、重さの操体、仰向け膝立ての姿勢から肩の方に体重を移し
ていく方に意味がある操体だからです。ためしに、仰向け膝立てで肩の方に体重を
移さないで、踵ふみこみをしてみてください。とても窮屈で気持ち良さが出てこな
いと思います。それで、この操体については、重さの操体のところで説明すること
にします。
(no.14の後半に続く)

>>>つぎへ>>>術伝流操体no.14

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