和方養生技術伝承塾~鍼灸・操体実践講座~ 急性期から慢性期まで患者さんが喜ぶ技術を伝承します

術伝流一本鍼no.16

(1) はじめに †
 鍼灸の運動器系の治療の基本は「遠くに強く、患部は軽く」で、「動作制限には
動作鍼」でした。今まで説明してきた、腰、肩、膝、肘など以外の運動器系の疾患
も同じように治療できます。例えば、鞭打ち、顎関節症、寝違いなどは、「手足の
甲への引き鍼」と「動作鍼」が非常に効果的な典型例です。

 みな肩から上なので、肩から上の運動器系の応急処置の基本手順を復習しておき
ましょう。


(2) 肩から上の運動器系処置の基本手順 †

1.まず症状を確認 †
 やりにくい動作を痛くなる一歩手前までしてもらい、向きと限界を確かめます。

 その動作でもっとも伸びるラインともっとも縮むラインを確かめ、その中でも、
もっとも伸びようとしているところ、もっとも縮もうとしているところを探します。
とくに、伸びようとしているところにツボが出ていて、そこが伸びないために動作
制限があることが多いです。

 さわれるようなら、そのあたりの皮膚や筋肉の状態も調べておきます。


2.手の甲に刺鍼しながら運動鍼 †
 動作制限の原因のツボに経絡的に関連する手の甲に強めに引き鍼しながら、痛く
ない無理のない範囲で、動作制限のある関節をゆっくり動かしてもらいます。

 経絡的な関連は、左右*前横後ろです。手甲の骨間の中で、患部が右なら右、左
なら左の、鼻など前よりなら1~2間、顎関節なら2~3間、耳など横側なら3~4間、
後頚部など後ろ側なら4~5間の骨間を探します。隣の骨間に出ることもあります。

 かるい寝違いなどは、これで、半分くらい改善することも多いです。


3.熱いところがあれば散鍼し、出やすいところにツボが出ていれば刺鍼 †
 患部の近く、これから刺鍼するあたりで熱いところがあれば散鍼しておきます。
とくに急性期に炎症を起こしているときなどは、散鍼をていねいにやります。

 腰や肩などと同じように、その症状で高い確率でツボが出やすいところを知って
いたら調べてみます。ツボが出ていたら刺鍼します。


4.動作鍼 †
 動作制限を確認し、痛む直前の姿勢でもっとも伸びるラインの中でもっとも伸び
ようとしているところを押して痛ければ、その痛む直前の姿勢のまま、そこに刺鍼
していきます。

 抜鍼したら、いちどラクな姿勢にもどってから、また同じ動作を繰り返してもら
います。先ほどよりもすこし余分に動くようになっていると思います。また、痛む
直前の姿勢でツボを探して刺鍼します。日常生活に不自由がなくなるまで繰り返し
ます。

 数少ないですが、もっとも縮む側が悪い場合もありますが、手順は同じです。

 急性期で炎症を起こしているときには深く刺さず、接触鍼をしながら動作鍼をし
ます。


5.つけたし †
 つけたしでおこなうことがあればしておきます。


6.頭散鍼と手甲引き鍼で仕上げ †
 以上の刺鍼で頭に邪気が登ることもあるので、熱いところがあれば散鍼しておき
ます。

 おわりに、もういちど手の甲にツボを探し、強めに引いておきます。はじめと同
じ骨間になった場合には、八邪を使います。


(3)顎関節症 †

1.症状確認 †
 顎関節症の場合には、口の開き加減(写真1)と奥歯の噛みしめ具合を確認して
おきます。
画像の説明写真1


2.手甲に引き鍼しながら運動鍼 †
 手甲にツボを探します(写真2)。
画像の説明写真2
他に症状がなければ、顎関節の位置から、3~4間に多いです。もちろん両隣に出て
いる場合もあります。みつけたツボに引き鍼しながら、無理のない範囲でゆっくり
口を開けたり閉じたりしてもらいます(写真3、4)。
画像の説明写真3
画像の説明写真4
 かるいものなら、これでかなり改善してしまうことが多いです。


3.散鍼とツボの出やすいところの刺鍼 †
 顎関節症の場合には、症状が出始めでも経過としては長いことが多いので、他に
症状がなければ熱いところはあまりないことが多いと思います。また、ツボの出や
すいところも動作鍼の要領で探したほうが見つけやすいです。


4.顎関節に動作鍼 †
 口を無理のない範囲で開けてもらい、顎関節ちかくで制限のもとになっていると
ころをみつけます。それから、顎関節を開くときに伸びる筋の筋腹など、開くとき
に患者さんが痛みや引っかかる感じを受けるところあたりを探します。

 顎関節あたりに付着する腱の筋腹が関係していることもあり、その場合には顎関
節からすこし離れたところにツボが出ます。とくに、顎関節の骨の上の浅い部分が
障害になっている(写真5)場合には、そこに付着している筋の筋腹を調べます。
画像の説明写真5
頭より、つまり下顎をつっている筋の筋腹が多いです(写真6)。
画像の説明写真6

 ツボが細かいことが多いので、指で特定が難しいときには、指へのお灸のときに
使ったツボ探し棒を使って特定します。

 見つけたツボに刺鍼します(写真7)。
画像の説明写真7

 1回でダメなときには、動作鍼を繰り返します(写真8)。
画像の説明写真8

 こういう現象が起きるのは、顎関節症が辛さに歯をくいしばって耐え続けた結果
として症状が出るからのようです。

 こういう例は、肘や踵(かかと)、指などもふくめ、小さめの関節の浅いところ
の痛みに多く、そこを引っ張る筋肉の筋腹にツボを探し刺鍼します。


5.その他の刺鍼 †
 顎関節症の場合には、頸椎4番付近の督脈や華陀経にもツボが出ていることもあ
り、出ていれば刺鍼します。

 心に辛さを抱えていることが多いので、余裕があれば、心を鎮めることに関係す
るツボが出やすいところを調べ、ツボが出ていたら刺鍼します。また、頭刺(写真9)
画像の説明写真9
が効果的なことも多いですし、頭のツボと経絡的相関(左右×陰陽×前横後ろ)か
ら足の甲へ引き鍼しておくのも効果的なことが多いです。「心を鎮める」に関して
は、「養生の一本鍼」の応用例として、のちほど詳しく解説したいと思います。


6.仕上げ †
 頭に散鍼してから(写真10)手甲に引き鍼(写真11)。
画像の説明写真10
画像の説明写真11
とくに頭の散鍼は丁寧に行ったほうが、気分がすっきり、心が晴れ晴れしやすいで
す。


(4)鞭打ち †
 鞭打ちの場合に症状確認のときに注意するのは、事故などで、どういう方向から
衝撃を受けたかということです。衝撃を受けた方向をできるだけくわしく聞きます。

 衝撃の方向と動作制限のあるラインが一致することが多いので。念のため、実際
にやりにくい動作を無理のない範囲でしてもらい確認しておきます。また、日常生
活でとくにできなくて困る動作があれば、確認しておきます。

 時間が経過している場合には、動作制限のライン上にペッコリ穴が空いたような
ところが見つかります。見た目にもヘコんでいることが多いし、指で押してみると
指が奥まで入ってしまうことが多いです。そこが改善すべきツボの出ている場所で
あることが多いです。

 経過が長いので麻痺して痛まないことも多いので、患者さんが痛くないと言った
からという理由で選穴しない理由にはなりません。いちばん衝撃を受けたラインか、
日常生活でいちばん困っている動作制限でもっとも伸びるライン、この二つのライ
ン上で、いちばんヘコんでいるところが候補になります。

 手順は、顎関節症と同じで、手甲引き鍼のあと、見つけておいた衝撃を受けたラ
インなどのツボに刺鍼し、動作制限が残っているようなら動作鍼をし、頭の散鍼と
手甲への引き鍼で仕上げます。

 重い人の場合には、1回の治療で1方向の動作制限の改善という感じで数回治療
することもありましたが、軽い人の場合は1度の治療ですっかり良くなってしまう
ことも多かったです。重い方の場合は、体全体の調子を整えるために、腹診なども
ふくめ養生の一本鍼を併用して治療したほうが改善が早かったです。

 鞭打ちは、十数例経験しているのですが、術伝流の写真を撮り始めてからは、モ
デルになってくださる患者さんが見つからないでいます。モデルになってくださる
方をご存知の方は紹介してくださるようお願いします。(>>>術伝流のモデル)

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