和方養生技術伝承塾~鍼灸・操体実践講座~ 急性期から慢性期まで患者さんが喜ぶ技術を伝承します

術伝流一本鍼no.15

1.依頼の経過 †
 互いに症例などを相談し合うメーリングリストを開いています。そこに、まえに日曜
講座1期に出ていた鍼灸学校生から、相談のメールが来ました。

 クラスメートがバイトで重いものを上げ下げした結果、両手の指が曲げづらく、握っ
たり開いたりの動きが、寒さでかじかんだような、ぎこちない感じになってしまったと
いうことでした。

 メールでやり方を伝えて、お灸をしてもらったのですが、改善がいまいちだったよう
です。そこで、メールをなんどかやりとりして相談し、クラスメートの方と、そのバイ
ト先の同僚で似た症状の人の二人を、日曜の鍼灸講座で施術してみせ、紹介者とクラス
メートの方には、治療の仕方をおぼえてもらうということになりました。

 事前に送ってもらった二人の症状は、以下の通りでした。

(1)Hさん(20代女性)、クラスメイトです。
主訴:手を握る動作がしづらい(両手)。動きもぎこちないですし、痛むときもあるそう
です。

 週に1回、飲食店のアルバイトで15,6キロのお釜を毎日5,6回かなりの高低差を上げ
下げしています。ただ、最近はアルバイトの回数を減らしたので、つらさは軽減している
そうです。

(2)30代男性、Hさんのアルバイト先の人です。
主訴:腱鞘炎で、手を握る動作がかなり制限される(両手)。

 この人は毎日勤めています。整形外科で腱鞘炎の診断を受け、ロキソニンを服用。「手
を休めるしかない」と言われているそうです。


2.鍼灸学校生を鍼で改善 †
 まずは、比較的かるい鍼灸学校生から。講座の終わり際を使うため、二人で30分しかと
れなかったので、いちばん痛むところのみを改善し、あとは、本人や紹介の鍼灸学校生に
施術してもらうことでることを了承してもらいました。

 聞いてみたら、手を握るときに左手の中指の甲よりの関節が痛くて、握る動作がしづら
いということでした(写真1)。
画像の説明写真1

 鍼灸学校生なので、鍼になれていると思い、鍼で治療してもよいか聞いたところ、鍼で
もよいということでしたので、鍼で治療してみることにしました。

 まずは、患部の左中指の井穴をツボ探し棒で押して比べてみると、薬指よりが痛いとい
うことでした。念のため、隣の薬指も調べたら、中指よりの井穴も痛いということで、そ
の2カ所の井穴に鍼をしました。

 こういう井穴のように細かいツボに鍼するには、No.12にも書きましたように、まず、
ツボ探し棒などで、すこし強めに押して痕(あと)をつけ、その痕に鍼先を置いてから鍼
管をかぶせ、かるく彈入してから、鍼管を取り去ります(写真2)。
画像の説明写真2
それから、すこし旋撚などの手技をし(写真3)、素早く抜鍼します。
画像の説明写真3
すると、この場合のように、経絡的に関係するところに炎症性疾患がある場合には、点状
出血することがある(写真4)ので、アルコール綿でふいておきます。カゼなどで発熱して
いるときにも、井穴に上記のような感じで鍼をすると、点状出血することがあります。
画像の説明写真4

 それから、手を握る動作で、中指を動かしてもらい、その動作で伸びようとしている筋肉
と縮もうとしている筋肉を調べ、ツボを探しました。

 中指の場合は、伸びようとしているほうは、前腕のいちばん太いあたりの手小陽経に、縮
もうとしているほうは、前腕のいちばん太いあたりの手厥陰経に、それぞれツボが出ている
ことが多いです。指を辛くない範囲で曲げたり伸ばしたりしてもらい、そのときに前腕のい
ちばん太いあたりで動いている部分をみつけ、そのあたりをさぐり、ヘコんでいて押して痛
いところをみつけます。

 陽経側(写真5)、陰経側(写真6)の順で刺鍼しました。
画像の説明写真5
画像の説明写真6

 そのあと、握る動作をして確かめてもらったら改善していたので、仕上げに移りました。
もちろん、重い場合には、日常生活に支障がない程度になるまで繰り返す必要があります。

 仕上げは、中指の根元の八邪を比べ、痛かったほうの薬指側の八邪に引き鍼しました(写真7)。
画像の説明写真7


3.バイト先の同僚の治療 †
 次は、バイト先の同僚の人で、こちらの人のほうが重いのですが、やはり時間がないの
で、いちばん辛いところだけにしてもらいました。

 手を握る動作(写真8)をしてもらったら、とくに、右手の中指と親指が痛いということ
でした。
画像の説明写真8

そこで、くわしく調べたら、中指は、鍼灸学校生とほぼ同じあたりの陽経側(写真9)と陰
経側(写真10)にツボが出ていました。
画像の説明写真9
画像の説明写真10

親指については、親指をにぎる動作のときに伸びるほうは、前腕の太い部分の陽経側(写真11)
に出ていました。親指をにぎるときに縮むほうでは、前腕の太い部分の陰経側(写真12)だ
けでなく、手のひらの親指よりの膨らみ(母指球)のほぼ中央(写真13)にもツボが出てい
ました。手の親指の屈筋は母指球にもあるので、当たり前ですが。
画像の説明写真11
画像の説明写真12
画像の説明写真13

 いろいろな方法を見てもらったほうがいいし、指への鍼は初めての人は痛がる場合が多い
こともあり、灸で施術してみることにしました。

 親指と中指の井穴をツボ探し棒で押してみて痛いほうを選びました。親指は外側、中指は
人差し指よりでした。親指、中指の順で、灸点墨をつけた手指用糸もぐさを灸点にたて、灸
をしました(写真14、15)。
画像の説明写真14
画像の説明写真15

 そのあと、手のひらの母指球に出ていたツボをツボ探し棒で押して場所を特定してから、
灸をしました(写真16)。
画像の説明写真16

 そのあと、前腕のツボを施術したのですが、前腕のツボは、指などに比べると深いこと
が多く、灸の場合、腕を置く位置によって効果が出にくいこともあるので、鍼のほうが確
実なことを説明し了解したもらった上で、鍼をしました。もちろん、灸でもていねいに腕
を置く位置を決めていけば効果が出るのですが、このときは時間がなかったことも鍼を選
ぶ要因の一つでした。

 陽経側、陰経側の順で、親指と中指を動かす筋の筋腹に出ていたツボに順番に刺鍼しま
した(写真17、写真18、写真19、写真20)。
画像の説明写真17
画像の説明写真18
画像の説明写真19
画像の説明写真20

途中で、確か1カ所、鍼先が当たったと思うのに効果が出ず、鍼先の向きを変えたとたん鍼
の響きが出たところがありました。やはり、灸でなく鍼を選んで、この場合は正解だったか
なと思いました。

 手をにぎる動作をしてもらったところ(写真21)、痛むところがなくなったということで、
仕上げに移りました。もちろん、痛むところが残った場合には、日常生活に支障がない程度
まで、動作鍼を繰り返す必要があります。
画像の説明写真21

 仕上げは、右手の八邪を調べ、いちばん痛かった中指と薬指の間に引き鍼をしました(写真22)。
画像の説明写真22

4.その後
 終わったあとに来たメールでは以下との通りでした。

「先日はモデル患者を治療していただき、ありがとうございました。帰り道での彼らの明る
い表情が印象的でした」

 そこで、施術後に表情が明るいと予後が良いことが多いということ、紹介者やクラスメー
トの人が同じようにやっていけば、たとえ仕事でぶり返してもどんどん改善すること、仕事
の合間に指を反らしたり揉んだりするとよいことを伝えました。

 その後来たメールでは、手指用糸もぐさ、灸点墨、ツボ探し棒などをそろえ、養生を続け
ているようです。

 こういうふうに自分のまわりの運動器系疾患の人をやらせてもらうことで、鍼灸の技術を
身につけ向上させてていくことができますので、どんどんやってみてください。

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