和方養生技術伝承塾~鍼灸・操体実践講座~ 急性期から慢性期まで患者さんが喜ぶ技術を伝承します

術伝流一本鍼no.1

術伝流一本鍼no.1  肩腰など運動器の応急処置を一本鍼で

はじめに

みなさんは、運動器系の応急処置を鍼灸でどうされていますか? 患者さんからの要望は一番多いのではないかなと思いますが、それについて習ったことがありますか?

私が調べた限りでは、鍼灸の技術は本治が中心、言ってみれば慢性期の養生法として体の歪みを整えていくという感じのものが多く、運動器系の応急処置がまとめて説明されているのは、あまり見かけません。

肩や腰など運動器系の患者さんが多い

 私自身、学生時代には学校以外でもいろいろな講習会に出ましたし、本を読んだりしていろいろな流派の技術を学びましたが、慢性期の養生が中心でした。
資格を得た時点では、講習会で講習生相手では効果が出せるようにはなっていました。
卒業してすぐ雇われ院長をしていましたが、来る患者さんは肩や腰など運動器系の患者さんが多かったです。

慢性期の養生での治療体験

 もちろん、鍼灸は慢性期の養生が基本だと思います。
慢性期の養生で体全体を整えられると、思いがけぬ辛さが消えていくことも良くあるので、慢性期の養生だけで治せたものもありました。
その代表例は、生理痛にともなう、生理の少し前から始まる腰痛で、慢性症状が絡んでいたからだと思います。
腰痛が治っただけでなく、始まってから10年以上非常に辛かった生理痛もすごく軽かったとのことでした。
生理痛にも効きそうだから続けてやってみてもらえませんかということで、生理痛の治し方など知らなかったので駄目元でも構わないならということで引き受けました。
週1で2カ月ほど続けて2回分の生理がとても軽かった(3回連続ということ)ので終了しましたが、その後1年ぐらい生理痛がほとんどなかったそうです。
その後、その方の友人を数人連続して行いましたが、体の歪み方はみなさん似ていました。

学校では教えてくれなかった運動器系の応急処置

 しかし、在学中にいろいろ学んだとは言っても資格取得したばかりですから、治せない事例もたくさんありました。

特に、肩こり、腰痛など来てくださる方が多い疾患ほど、慢性期の養生で体全体を整えても、「いまいちだなぁ」と言われることが多かったです。
肩腰をはじめとする運動器系の症状に関してはどちらかというと改善があまり進まないことも多かったし、慢性期の手順でやっていると当時は時間がすごくかかったので、運動器系の応急処置をなんとかできるようになりたいなと思いました。

一本鍼での運動器系の応急処置

 それで、慢性期の養生を一本鍼でしていたので、一本鍼での運動器系の応急処置をできるように、いろいろ工夫してみることにしました。
一本鍼の諸流派の手順を比較しているうちに共通点として、手足などの末端に引くことと背中側などの陽側に引くことが2つの基本であることに気がつきました。
この場合「引く」というのは、

「体の中の症状を刺鍼しているところに引っ張ってくる」

ということです。

一本鍼での運動器系の応急処置の手順

 手順としてみると、

 手足のとくに肘膝から先に刺鍼
→頭、首、胴の体幹部に刺鍼
→手足のとくに肘膝から先に刺鍼」

ということと、

 背中や陽経側などの陽側に刺鍼
→お腹側や陰経側などの陰側に刺鍼
→背中や陽経側などの陽側に刺鍼

ということになるなと思いました。
組み合わせると、

 手足(陽→陰→陽)
→体幹(陽→陰→陽)
→手足(陽→陰→陽)

ということです。

急性症状には手足末端

 また、いろいろな流派に急性症状はできるだけ手足末端を使うとよいという考えもあったのも思い出し、自分や仲間の肩こりや腰痛を手足の甲に鍼することで軽くできるように練習を続けました。

 それからもいろいろ調べたり、仲間や友人で試させてもらったりして、応急処置の場合にはまずは

陰経側にあまり刺鍼せず、
「手足(陽)→体幹(陽)→手足(陽)」

という手順が良さそうだなと感じました。

陰経側やお腹側は体の内側に響きやすいので慢性期の養生には大切だけれど、運動器系の応急処置でそこを動かすと慢性期としての治療をきちんと効果が出るようにする必要が出てくるからかなと思いました。

もちろん症状が重い場合には陰経側に刺鍼する必要が出てきますが、軽い場合には陽経側と背中側中心に体幹部の陽側のみに刺鍼するほうが無難だし時間がかからないように思いました。
それで、

陽経陽側中心に「手足→体幹→手足」の順

で刺鍼することを友人などで練習させてもらいました。

ぎっくり腰の患者

 それからしばらくしたころ、
「ぎっくり腰で医師の方に『10日ぐらい寝ていろ』と言われたけれど、夏なのに風呂にも入れなくて辛いから何とかしてくれないか」
という電話がかかってきました。
なって3日目というお婆さんでした。
息子さんに抱きかかえられるようにして入ってきて、横になったのですが、辛くて横向きにしか寝られないとのことでした。
当時私が行っていた慢性期の手順は、仰向けで腹診を中心にした診察をしてから施術、次にうつ伏せの施術というものでした。
横向き寝では、その手順は使えないし、腹診はやりにくいなと思いました。
それで、陽経陽側中心に「手足→体幹→手足」の順で刺鍼することを試してみました。

ぎっくり腰の応急処置

 腰だから足のできるだけ末端、足の甲を探ると、地五会付近に圧痛点が見つかったので、そこに刺鍼しました。
すると、それだけで少し軽くなったとうつ伏せに近い姿勢になりました。
腰のこの辺りがまだ痛いというので探し、大腸ゆ、環跳、お尻の中央などを刺鍼しました。
そしたら、「かなり良くなった」と言って座り帰ろうとしてましたが、慢性期の手順でもしていたので、仕上げに手の甲に鍼をしました。
すると、ぎっくり腰が良くなってしまいました。
次の日にもう一度来て、こういう動作がまだできないからというので、その動作のときにつらいところを中心に刺鍼して、それですっかり良くなってしまいました。
とても元気なおばあさんで、勢いに押されて治療したという感じもしましたが、お陰様で、応急処置のコツみたいなものをつかむことができました。

 その方の紹介で見えた膝が痛くて正座できないという方も同じように陽経陽側中心に「手足→体幹→手足」の順で刺鍼することで正座ができるようになりました。
ぎっくり腰だったおばあさんは元気で飛び回っているという話でした。
今から考えると二人続いて患者さんに恵まれたなと思います。
もっと重くて難しい患者さんが来ていたら失敗してあきらめたかも知れないのに、ちょうどよく、ちょっと工夫すれば治る程度の患者さんが続いたものだなと思います。

さらに工夫を重ねて

 その後も関係ありそうな資料を学び、自分や仲間に試し、いろいろな患者さんに教えられ、現在では、陽経を使った運動器系だけでなく、陰経も使った運動器系や内科系の応急処置手順もでき上がり、講座で後輩の方々に伝えられるようになりました。

基本は慢性期、多いのは運動器系疾患

 鍼灸の基本は慢性期の養生ですが、患者さんが多いのは肩こり、腰痛などの運動器系疾患であり、

しかも1回目の治療でその辛さが半分以下、できれば3分の1以下にならないと、なかなか信頼してもらえません。

とくに、資格取得間もない時期や開業直後にそれができなくて、この仕事を続けられなくなった方を大勢見てきました。

術伝流講座の方針

それで、私の講座では、運動器系の応急処置を身に付けることから始めています。
それから、運動器系慢性期、内科系慢性期、内科系急性期と続きます。
運動器系応急処置から学んでも鍼灸の基本は身に付けられますし、身に付けていけるような工夫をしています。
このごろ、それを臨床の場でいかしている方も増えてきました。
講座は初心者や学生さん向けにはじめたのですが、今では有資格者、すでに開業されている方も増えています。

おわりに

 これから講座で伝えていることを中心に連載していこうと思っています。

患者さんの多い腰痛からはじめ、肩、膝、肘と続けていきます。
その後、手首、足首や指などを解説します。
手首、足首では巨刺など、指ではお灸も使います。

文章でどの程度伝えられるかなという思いはありますが、工夫していきたいと思いますので、よろしくお願いします。
疑問な点やわかりにくい点は指摘してくださるようお願いします。

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