和方養生技術伝承塾~鍼灸・操体実践講座~ 急性期から慢性期まで患者さんが喜ぶ技術を伝承します

背中と脚裏の負荷分担

背中と脚裏の負荷分担
 今回は、脳性麻痺の次男と側湾の方を例に、縦切り相関の中でも、背中と脚
裏の負荷分担について考えた事を書きます。先ず、次男の例から。肺呼吸の段
階に無い状態で生まれた事と、いわゆる脳性麻痺特有の姿勢に関係があるので
は・・・と思っています。もちろん、脳性麻痺では腹筋に比べると背筋が優位
なので、背中側に反りやすいのですが、それだけではなく、肺呼吸の負荷との
関係も有るように思います。

 生まれて直ぐ6ヶ月入院して帰ってきた次男は後頭骨下縁から尾骨まで一様
に前に反り、胸部で後湾が無く、胸部も前湾していました。

 つまり、肺呼吸の段階に無い状態で生まれた事で肺に異常な負担が掛かり、
その負荷を分担するため、横輪切りの背中側が大変緊張し、そのため、胸部後
湾が無くなってしまったという面も在るのでは・・・と思います。胸部後湾が
無くなるほど胸を反らしてみました。すると、当然、腰も反り返りますから、
その姿勢のまま立ち姿勢を維持しようとすると、お尻を出っ張らせ、ソケイ部
(腹と足の境)を後ろに曲げ、踵を上げないと巧く立てない事がわかりました。
つまり、ハイヒールを履いたような格好です。余談ですが、ハイヒールという
のは本来は寝室用の履き物でバストとヒップを強調するためのものという話を
聞きました。

 次男は、3歳近くまで歩けず、歩いた時は踵と両手を挙げた、脳性麻痺児特
有の歩き方で、5歩歩くと転ぶという状態でした。小学校入学までは長い事歩
けずに、保育園の先生もベビーカーに乗せて移動していました。そして、まだ、
胸部後湾が無く胴を前に曲げられないので、マット運動の前転が出来ませんで
した。それで、このころ病院のPTの訓練で前転をすると、背中が曲げられな
いので戻ってしまったり、勢いを付けると背中でなくお尻からドスンと落ちる
ような形で前転していました。戻ってしまうことのほうが多かったです。擽っ
たり灸したりしていたら、だんだん、胸部後湾が出来てきました。小学校入学
以前は、冬の間ずっとゼロゼロと呼吸器の状態が悪かったのですが、胸部後湾
が出来始めた小学1年生の冬からは、ゼロゼロしなくなりました。

 動きの操体で好きなモノは仰向けで親指側を足の裏のほうに回しながら足を
伸ばすもので、一番気持ちよいと言ってました。つまり、脳性麻痺児特有の内
反尖足を強調する動きです。それも、はじめは、背中全体を反らすように伸ば
すのを気持ちよいと言うので、背中を反らしていました。つまり、胸部後湾が
無い事、胸部前湾を強調する姿勢です。しばらくして、ほぼ真っ直ぐに引っ張
るのが気持ちよいと言いだし、中学生になると、座っている私の肩に踵を乗せ
て引っ張られるのが気持ちよいと言うようになりました。なんとなく、力の作
用点が、だんだ背中上部から腰のほうへ降りてきているような感じを受けまし
た。

 胸部後湾が出来ましたが、中学前半までは、腰の前湾やソケイ部の後湾が強
く、つまり、腰が前に大きく反り、ソケイ部が後ろへ反っている状態でした。
この操体を続けたら、その辺りも緩んでいくかなぁ、そしたら、膝裏や脹ら脛
も緩んで踵を付けて歩けるかも知れないなぁという感じがして続けました。今
(2006年5月現在)高校1年生ですが、中学生の頃に比べると、腰やソケ
イ部の反りが少なくなり、歩幅も大きくはなっています。その代わり中学後半
からは足先の内反はきつくなっている感じで、歪みが下腿に集中してきている
ような感じを受けます。もう高校生なので大きな変化は望めないかも知れない
し、時間は凄く掛かるでしょうが、今だに少しずつ変化しているようです。1ヶ
月単位では変化が解らず、1年単位でようやく解る程度なのですが。

 いろいろやってきて、後ろ(背中)側の筋肉の負荷の分担により、胸の負担
を庇った結果、また、胴体部分が背筋優位である結果として踵が上がっている
可能性が大きいと思っているわけです。猿回しの猿は2本足でも歩けますが、
その猿の立ち姿勢での横からのレントゲン写真を見てみると、いわゆるS字カー
ブ、つまり胸部後湾がちゃんと在ります。普通の猿にはS字カーブはありませ
ん。猿回しの方が小猿の頃にマッサージをして背中や腰の筋を緩め、S字状の
カーブを描くようにしないと、2本足で歩けるようにはならないそうです。背
骨が綺麗なS字カーブを描く事と直立2足歩行とが関係有るように思えてなら
ないのです。

 次男のこの例は、立ち姿勢での体の前後のバランスに関係する負荷分担の例
ですが、左右バランスの負荷分担が関係しているのではという例では、30代
半ばで側湾が有り脹ら脛の左右差が凄い方に出会った事があります。片方の足
の脹ら脛のヒフク筋がズブズブで張りや厚みが無く、ほとんど無いに等しいほ
どだったのです。足の左右の力の入り具合というか、踏ん張ることが出来る程
度に応じて胴体の左右の重さを変えるために、背中上部で背骨が左右に曲がっ
た可能性が大きいのでは・・・と思いました。負担の差が大きいので、出来る
だけ上部で重さに左右差を付けたほうが少ない左右差で負担を平均に出来るが、
頭が曲がってゆれるのはまずいので、背中上部で左右差を付けた可能性が高い
のではないかなと考えています。

 このように、立ち姿勢や直立2足歩行での重心バランスというのは、胴体部
分に影響を与えるし、逆に、胴体部分の内蔵の病の影響が立ち姿勢や直立2足
歩行にも影響を与えるという、関係があるのだなと思います。まだ、次男のリ
ハビリで、胴体と足の動きのバランスで考えた事はいろいろあるのですが、長
くなったので、「体は自然編」の次の「操体の自然則編」で書いてみたいと思
います。

 また、この2足歩行と胴体の重心配分の関係からも、昔の方が経絡の中でも、
縦切りを正経12経として重視したのも、必然性がある事なのだなぁと思いま
す。12というのは、前横後ろで3,体の内外で2,手足で2で、組み合わせ
ると、3*2*2=12になります。また、操体で下半身から整えていくとい
う事を大切にしているのも改めて納得がいきました。そして、足の操体を行い
ながらも、胴体のどの部分に影響が及びやすいかを考えていく必要も感じてい
ます。

 さて、そこで、次回は、その直立2足歩行のバランスを取るという視点から、
膝から下で、足の内側の経絡が、前と横で逆転している理由について考えてい
きます。次回で縦切り相関の話を終え、その後は、横輪切りや縦切り以外の、
上下や対角などの相関を見ていきます。

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