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縦切りの原則:経絡

縦切りの原則:経絡
 さて、今回は、動作の負荷を分担する仕組みの第2の原則。これは、いわゆ
る、経絡です。立った姿勢で天から見て重なる処同士で負荷を分担しあうとい
うものです。つまり、第一原則が立ち姿勢での横輪切りに関係していたのと比
べると、立ち姿勢での縦切りの関係です。これは、直立2足歩行するヒトにとっ
て、重力が最も基本的な負荷だからだと思います。つまり、経絡(特に、その
中の正経12経)というのは、直立2足歩行する時の体にかかる重力という負
荷を分担する仕組みです。

 右足首に軽い捻挫した時の事を考えてみましょう。その状態で歩けば、当然、
右膝の外寄りや、右股関節の外寄りに余分に負荷が掛かります。ですから、そ
ういう処にツボが出来ていきます。ヒトの足は、骨盤を通して仙骨に繋がって
いるし、歩く時には腰の動きも使っているので、右腰の外寄りにもツボが出来
ていきます。

 橋本敬三・翁先生は、昭和13年発表の「力学的医学の構想」の中で、この
縦相関を作用力線の考えから説明し、「運動力線に対して重力線は重大な役割
をするのであるから、その組み合わせ上、縦の線である経が主となるものと思
われる。」と書かれています。経絡と重力の関係は私自身で思いついたと思っ
ていましたが、「もくもく」を書きながら関連する翁先生の文献を読み直して
いたら、上記の文章を見付け、やはり凄いなと思いました。

 藤木俊郎先生の『素問医学の世界』(績文堂)という本によれば、昔の人は
始め経絡を三陽一陰に分けたそうです。陽というのは体の外側の事で、陰とい
うのは内側の事です。つまり、体の外側を三つに分けたのです。どういう風に
三つに分けたかというと、「前、横、後ろ」です。つまり、前から見て見える
部分と、横から見て見える部分と、後ろから見て見える部分に分けました。

 手の指と頭や胴体の関係で言えば、親指は鼻や目頭や前歯に関係しますし、
人差し指は瞳や犬歯の付近、中指は目尻や奥歯、薬指は耳や首の横、小指は首
の後ろ側や肩や背中上部に関係しています。つまり、指と頭・胴との関係が手
を垂らした状態での「前、横、後ろ」に対応しているわけです。ただ、例に上
げた指と頭との関係を見ても解るように、きちんと3分類しているわけではな
く、前と横の間どうしも、横と後ろの間どうしも関係しています。つまり、よ
り正確に言えば、天から見た体の中心と前正面からの角度が同じ、または、近
い処どうしで負荷を分担し合っているわけです。

 また、100%相関対応しているわけではなく、他の歪みとの関係などから
隣の指に出る場合もあります。そして、指先と上腕(二の腕)に同じように負
荷を分担するわけではなく、どちらかというと、急性症状には手首から指先が、
慢性症状には上腕(二の腕、肘から胴より)が関係するようです。

 ヒトの立ち姿勢でのバランス(平衡)に関係する三半規管は内耳に在ります
から、眩暈(めまい)がした時には薬指を反らせると軽くなる事が多いです。
目のゴミは目頭から鼻に通じている鼻涙管という穴を通って鼻に行きますので、
ゴミの入った側の親指の爪の根本を反対側の親指と人差し指で暖めるように挟
んでいると速く鼻に行ってしまいます、巧くいけばですが。

 手のほうは、手のひら側は陰、つまり、体の内側に関係しています。これは、
普通に立った姿勢で手を垂らすと、手のひらが内側を向くからだと思います。
特に、胸の内側との関係が深いです。これは、手や腕を動かす時には、主に、
胸から上の筋肉を使うからだと思います。親指や人差し指は咳やノボセ、薬指
は吐き気、左小指は不整脈などに関係します。ただし、心臓が右にある人は右
小指が関係すると思います。

 陰、つまり、体の内側にも、体の外側ほどはっきりしていませんが、前・横・
後ろの関係があるようで、気管が前、食道が中ほど、心臓が後ろ側にある事と
関係しているように思います(この辺りは、次回、足の経絡の話をする時に、
もう少し詳しく説明します)。薬指は心の問題にも関係しています。これは、
胸の中央付近、もう少し細かく言うと胸骨の中央付近、気管支分岐部の下辺り
が、心の問題に関係しているからだと思います。「胸苦しい」という表現があ
るように。また、心が緊張した時の姿勢で、凄く縮めている、つまり、その辺
りの筋肉を大変緊張させている部分でもあります。

 この「前、横、後ろ」に体を分類してみるという考え方は、操体の治療でも
役に立ちます(もちろん、鍼灸や按摩指圧でも同じです)。カワの操体をする
時に、頭や首や胴体の部分に片手を触れたら、それに前・横・後ろで関連する
指を選んで探ると痼りがありますので、もう一方の手でその指の痼りを刺激し
続けると、頭首胴のカワの操体の効果が上がる事が多いです。自分にやる時に
は、例えば、心が乱れた時には、薬指を折り曲げて手のひら中央付近に当てて
ながら、その手の親指で胸骨中央付近にカワの操体をすると、心が落ち着く事
が多いです。

 また、指と頭首胴の間の手首・肘の関節付近にも、前・横・後ろの関連で探
すと痼りがみつかります。そういう痼りも組み合わせて、カワの操体を行うと
効果が上がります。

 また、どの操体を選ぶべきか解らない時に、指周りの痼りを圧して逃げる動
きをしてもらい、それを少し強調する操体を選ぶの事も出来ます。また、動き
の操体をしながら、関連する指の痼りを軽く刺激し続けるのも効果が高いです。

 長くなりましたので、足の経絡については、次回にします。

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