和方養生技術伝承塾~鍼灸・操体実践講座~ 急性期から慢性期まで患者さんが喜ぶ技術を伝承します

経絡の交差と2足歩行

経絡の交差と2足歩行
 今回は、足の膝から下の内踝側で前と横の経絡が交差している理由について
考えていきます。さて、ヒトは直立2足歩行するサルなんだそうです。よく、
数百万年前のヒトの化石が見つかったとかいう報道が有りますが、その場合に、
類人猿の先祖の化石かヒトの先祖の化石か、どこで区別しているかご存じです
か?直立2足歩行していた痕跡が有るかどうかで、その二つを区別しているの
だそうです。

 直立2足歩行という場合の直立というのは、体が地面に対してほぼ垂直に立っ
ていて頭がそのてっぺんにある状態で2足歩行していると言う事です。そのた
め、歩く時の頭の揺れが少なくなって、頭が大きくなれたのだと考えられてい
るようです。つまり、鳥や恐竜も2足歩行をしていますが、体は横向き、つま
り、地面に対して水平方向に伸びています。ほぼ真ん中にある2本の足を支点
に、前にある頭や首、後ろにある尻尾や尾羽、その二つで前後のバランスを取っ
て、2足歩行をしています。それで、頭が大きくなるとバランスが取りにくく
なるので、頭が大きくなれなかったようです。大きな違いは、バランスの取り
方にあるようです。そこで、この鳥の歩行とヒトの歩行に直立している事の他
に何か違いがないか詳しく見ていく事にします。つまり、なぜ、ヒトだけが直
立2足歩行できるのかという事なのです。

 私が、このあたりに興味を持ったのは、会社員時代にロボットの歩行を調べ
た時からです。ロボットに2足歩行をさせるのはとても難しいのです。私が調
べていた1990年頃に実用化されていた歩行ロボットで足の本数が一番少な
かったのは8本足のモノで、大きなガスタンクの点検用でした。大きなガスタ
ンクのヒビや穴などの点検、特に下側の点検は、人間がやるのも大変だったの
で開発されたようです。8本足というと、生き物の世界では蜘蛛ですね。当時、
研究中で足の本数が少ないものには6本足のモノが在りました。つまり、昆虫
の足の本数です。人間の作る器械は硬いので、外骨格系の蜘蛛や昆虫の足の本
数よりも少ない足本数のロボットの開発は難しいのかな、などと当時は考えて
いました。蟹・蝦、蜘蛛・百足、昆虫などの外側が硬い外骨格系の生き物で足
が6本より少ないモノは地球上に存在しません。

 それで、内骨格系の動物の歩行をいろいろ調べてみる事にしました。鳥の歩
行とヒトの歩行を調べているうちに大きな違いがいくつかある事に気が付きま
した。そのうち、体が直立していない事以外で、一番大きな違いは、足跡の横
幅の違いでした。ヒトの足跡の横幅は、体の胴体部分の横幅よりも狭いですが、
鳥や恐竜の足跡の横幅は、胴体の横幅よりも広くなっています。鳥や恐竜の足
の形を見ても、横幅を広げ安定させるために横に指が大きく開いた形をしてま
す。

 鳥は羽があるので、一見胴体の幅よりも狭いように思いますが、羽根は重さ
が軽いので足で胴体の重さを支える時にはあまり負担になりません。それで、
羽根をむしった状態での胴体の横幅を見ていくと、足跡の横幅は胴体の横幅よ
りも広くなります。現在、恐竜は鳥に進化して生き残ったという説が有力です
が、歩き方という点でも鳥と恐竜は同じです。

 この足跡の横幅という視点で、動物の歩き方を見ていくと、四足で歩く動物
たちにも、歩く時に足跡の横幅が広いものと狭いものの2種類いる事がわかり
ました。ワニなどのハ虫類は足跡の横幅が体よりも広く、ホ乳類はゾウのよう
に大型のものでも足跡の横幅は体の横幅よりも狭いです。

 また、歩く時の背骨の動きも違います。ハ虫類では、尾鰭(おびれ)を横に
振って泳いでいた魚の名残なのか、背骨を横に振って歩いています。しかし、
ホ乳類では背骨を縦に振って歩き、走っています。ですから、ホ乳類になって
から海に戻ったイルカや鯨は、海で泳ぐ時にも背骨を上下に振って泳いでいま
す。背骨を上下に揺らして歩き、走れるようになったので、横揺れが少なくな
り、足跡の横幅を狭くできるようになったし、同時に頭を大きくできるように
なったと考えられます。

 でもそれだけではなく、足跡の横幅が胴体の横幅よりも狭くなるためには、
歩く時に足を中心に寄せる力が常に働いている必要があります。実際に靴底の
減り方や靴下の破れ方等で見ても、足の指のほうでは、親指側に力が掛かって
いる事がわかります。つまり、踵を支点にして足の親指側に力が入るような構
造と筋肉のシステムが有ると言う事です。足の筋肉が伸筋優位で脳性麻痺や片
麻痺で内反尖足になるのも、足を中心に寄せる力を常に働かせる必要があるか
らかもしれません。

 私は、足の内側の経絡が膝より下で交差しているのは、足に、この中心に寄
せる力を発生させている構造とシステムがあるためだと考えています。足の内
側の横にあるべき経絡が骨のほう(体全体で言うと外側のほう)に周りながら
前に有るべき経絡よりも前に出ようとすると、中心によせる力が発生するから
です。手の人差し指・中指・薬指を机などの上に立て、中指を手の甲の側から
人差し指の前に出そうとすると、中心に寄せる力が生まれる事が確かめられる
と思います。

 この点から見ても、経絡が筋肉のかばい合い、つまり、負荷分担の仕組みだ
という事が解ると思いませんか?経絡を「体の内外を走る作用力線の通路だ」
と見抜いた橋本敬三・翁先生は、やっぱり凄いなと思います。

 1990年頃と違って、今は、ホンダのアシモが在りますが、まだ、鉄腕ア
トムのような自由な動きはできません。アシモの足跡の横幅を見ても胴体の横
幅よりも狭いとは言えません。ソニーのAIBOもホ乳類である犬などの格好
をしていますが、足跡の横幅は胴体の横幅よりも広いです。現在、2050年
にサッカーのワールドカップ優勝チームにロボットチームで勝つ事を目指す、
ロボカップというプロジェクトが進行中です。私は、2足歩行ロボットで勝つ
ためには、この足跡の横幅が胴体の横幅よりも狭い歩き方、走り方ができるロ
ボットが開発できるかどうかに懸かっているように思います。

 まぁ、ナンバ歩きができる格闘技ロボットや、モンローウォークができる女
優ロボットのほうが先に開発できないと2足歩行でサッカーが出来るロボット
の開発は難しいように思いますが。特に、モンローウォークは、足跡の横幅が
胴体の横幅よりも狭くないと成り立たないというか、美しく見えない歩き方で
すから。

 なお、ナンバ歩きというのは、同じ側の足と手が前に出る歩き方で、日本人
なら引き戸を開けながら、あるいは、暖簾をくぐりながら歩く時にしている歩
き方です。格闘技の際には、相手から見えるというか、相手にさらす体の部分
を細くできるので、基本の歩き方になります。

 そういうロボットたちが開発されていく過程で、人間の歩き方についての科
学も進歩し、それが医療の分野、リハビリ技術などに応用されるようになる事
を祈っています。その歩き方の科学を創っていくために、操体や鍼灸の経絡の
考え方は、とても役に立つだろうなと思います。


下腿の経絡交差と経絡現象 †
•私は、はじめ、足の経絡が下腿で交差しているのが本当かどうか判りませんでした。
◦ある時、足の内側の横の経絡(足厥陰)にそって、
直径1,2mmのシミが点々と2,3cmの幅で出ている方に出会って、
その事を本当にそうだなと思うようになりました。
■大腿部は中央付近、下腿は脛骨粗面(弁慶の泣き所)上、
足の甲は親指と第2指の間に向かって、点々とシミが出ていたのです。
目の慢性難病を抱えている方でした。
◦こういうのは、経絡現象と言うそうで、日本でも報告が有りますし、
中国では本も出ています。
◦自分で足首から先に鍼灸したりして、交差していそうだなと思い始めていた時だったので、
驚くと同時に理由を考え始めたのです。
なにか体にとって不可欠の理由があるに違いないと・・・。
◦そして、現在、今回書いたような結論に達しています。
 今回で体に掛かる負荷を分担するシステムの中の縦の関係を終わります。次
回からは、横輪切りと縦切り以外の、左右・前後・上下やそれぞれの対角など
の負荷分担システムについて書いていきます。

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