和方養生技術伝承塾~鍼灸・操体実践講座~ 急性期から慢性期まで患者さんが喜ぶ技術を伝承します

痼りとその周りの筋肉

痼りの周りの筋肉を緊張させるのが、動きの操体の基本 †
•今回は、痼りから操体を予測するの2回目で、
「動きの操体の切っ掛けとなる動きは
 痼りのある筋肉を緊張させる動きが基本」
という内容です。
◦操体を長くされている方なら既にご存じでしょうし、
達人の先生方から
「痼りが在る筋肉を縮ませる動きを切っ掛けにすると良い」
という話を聞いた事がある方もいらっしゃるでしょう。

筋肉は働く時には緊張する †
•さて、
筋肉が働く時には、筋肉には力が入り、
緊張して硬く太くなり、
筋肉を縮めようとする力が働きます。
◦そのため、
他に力が働かない時には、筋肉は縮んでいきます。
◦バケツを持って立たされた時など、
腕を伸ばしたまま、重い物をぶら下げている時にも
筋肉は働いていますので、
力が入り緊張して硬く太くなり、
筋肉を縮ませようとする力は働いていますが、
筋肉は縮んではいません。
■同じ姿勢を維持し続ける時などには、こういう
筋肉の長さが変わらない働き方をしているようです。
•働いていない時には、
筋肉は緊張が緩んで柔らかく細くなり、
縮んでいた場合には伸びます。

緊張したまま緩まなくなったのが痼り †
•体が動く時には
筋肉はその動きに従って働き緊張します。
◦逆に言えば、
人間を始め脊椎動物は
筋肉を働かせ緊張させて動いているわけです。
•同じ動作を繰り返し行ったり、
長時間同じ姿勢を続けたりすると、
同じ筋肉を緊張させ続ける事になるので、
その筋肉は疲れてきます。
◦その疲れが休んだり寝たりして、
次の日までに無くなっているうちは良いのですが、
疲れが累積して溜まっていくと、
緊張している必要が無い状態なのに、そう、
その時に行っている動作や取っている姿勢では
その筋肉は緊張していないほうが自然なのに、
硬く太く緊張したままになっている部分が
疲れた筋肉の中に出来ます。
■これが痼りです。

縮んだままだから伸ばそうとすると痛いし、歪んで見える †
•つまり、
本来は必要に応じて緊張し働く筋肉の一部分が
使いすぎによって疲れきって
緊張したまま硬く太くなって緩まなくなってしまったのが
痼りです。
◦ですから、
無理して伸ばそうとすると、つまり、
その筋肉が緩まないと出来ない動作をすると、
痛みが出て、
それ以上は伸びないよと文句を言うというか、
メッセージを出すわけです。
◦そして、
緩んでいるほうが自然なのに
硬く緊張している部分が出来るわけですから、
他の力が働かない状態では
その筋肉の長さは縮んでいる事が多くなり、
体全体を眺めてみると歪んで見える
事になります。
■左右で凝っている部分が違えば
左右差が目に付く事になります。

伸ばそうとすると痛いので、縮めてみる †
•さて、
操体では無理をしませんから、基本的には、
そういう痼りに対しては
痛い動きと反対の動きで対処します。
◦緩める動作をすると痛いのですから
緊張させてみるわけです。
■見た目に解りやすいので、
縮ませてみる事が多くなります。
1.痼りの在る筋肉を縮ませていくと、
その筋肉の中の痼りになっていなかった部分も
だんだん緊張して縮み硬くなっていきます。
2.痼りの周りも痼りと同じくらいに緊張した時には、
痼りは目立たなくなります。
◦そのため、先々回に書いたように、
「タワメの間では痼りは消える」
という現象が起こるのではないかと思います。
■つまり、
動きの操体では、
痼りの周りの筋肉をその痼りと同じくらいか、
それよりももう少し緊張させた時に
タワメの間という状態になるようです。

腕と胸の間の水掻きで試す †
実際に試してみましょう。

•肩こりも慢性化してくると、
脇の下や、その前後の
腕と背中との間や腕と胸との間の水掻き状の所にも
痼りが出来ます。
•自分で試す場合には、
胸と腕の間の水掻きがやりやすいでしょう。
i.その部分を反対側の親指と他の4指で挟んで
痼りを探します。
ii.痼りが見つかったら、
その痼りを挟んだまま、
腕をあちこちに動かしてみます。
■腕を伸ばしたまま横や後ろに挙げると
痼りの周りの筋肉が緩むせいか、
その痼りが目立つようになるし
痛みも出てくるでしょう。
■腕を伸ばしたまま前に挙げると
痼りが挟んだ指から外れ、
外れる時に痛みが出るようです。
■肘を曲げて
指先を反対側の上腕に近づける時に
比較的痼りが目立たなくなるようです。
iii.その状態から手首を捻転してみます。
■小指が手の甲側に回るような手首捻転では
痼りは再び目立つようになります。
■小指が手の平側に回る手首捻転をすると、
痼りはますます目立たなくなり、つまり、
痼りの周りの筋肉全体が硬く膨らんできて、
痼りを摘んだ時に感じた痛みも消えます。
iv.その手首捻転を切っ掛けにして、
その動きがし易いように首や背中にも動きを伝え、
そういう動きがやりやすいように体重も移して、
体全体に動きを伝え、体全部丸ごと連動させていきます。
■そうすると、
首は目標の痼りのほうに近づき、
背中全体も側屈して
体重が目標の痼りのある側に掛かっていく
 と思います。
v.すると、
ほんのりとした気持ち良さも出てきて、
お腹の息も深くなり、
タワメの間になった事がわかると思います。
•水掻き部分の中での痼りのある場所によって、つまり、
その中での痼りの選び方によって、
少しづつ腕の位置や曲げ具合は違ってきますが、
小指を手の平側に回す手首捻転をすると、
この辺りの筋肉は硬く膨らんでくるようです。
•あともう一つ、
この胸と腕の間の水掻き状の部分の痼りは
挟んで摘んだ状態で脇の下のほうに移動すると
痼りが目立たなくなるようです。
◦それで、
実際に集まって二人組で練習する時や臨床の場では、
この部分の痼りを見付けたら、
その痼りを先ず目立たないほうに動かしてから、
手首を
その痼りの筋肉が目立たなくなるようなほうに捻る
 事にしています。

背中と腕の間の水掻きでも同じ †
•試してみるとわかりますが、
後ろ側の腕と背中の間の水掻きの中に在る痼りも、
その痼りを先ず目立たないほうに動かしてから、
手首をその痼りの筋肉が目立たなくなるようなほうに捻る
 事を切っ掛けにすると
タワメの間が見付けやすくなります。
◦後ろ側の水掻き内の痼りは、
手の甲を反らした状態から
中指が小指側に回るような手首捻転をすると、
目立たなくなるようです。
■ヤジウマしてみてください。
•『万病を治せる妙療法 操体法』p59に
似た操体操法が載っています。
◦書かれている割には、使われていないようですが。
■そこには、
パッストン系の脱力で書かれていますが、
現在では、
戻したくなるまでジックリタワメの間を味わい、
フッくにゃぁ系の脱力をしたほうが気持ちよい
 と言う方が多いです。

爪先挙げでも脹ら脛の筋肉は緊張している †
•定番の動きの操体でも、
痼りを見付けて、
その痼りを目標に行う操体では、
その痼りの周りの筋肉を働かせるほうに動かしている
 事が多いようです。
◦膝裏の痼りを取るための有名な
「仰向け膝立て爪先挙げ」の操体でも、
その動きをすると
脹ら脛が硬く膨らみ緊張してきます。
■確かめてみないと、
この爪先上げ操体で緊張してくるのは
足の甲側の下腿の筋肉(前脛骨筋など)で、
脹ら脛の筋肉は緩んでくると思ってしまいますが、
実際に触りながら操体操法してみると、
下腿前側の筋だけが緊張するのではなく、
下腿裏側の脹ら脛の筋も緊張するようで、
触っている所が硬く膨らんでくるのが解ります。
•触る場所は、
膝裏よりも少し下から脹ら脛の真ん中付近が良い
 と思います。
◦そして、そこが硬くなった頃に
膝裏の痼りが目立たなくなるのを
観察できると思います。
■この場合には、
脹ら脛の筋肉は
長さが変わらないほうの働き方をしているのでしょう。
•膝裏の痼りは、
どちらかというと脹ら脛よりにある場合が多いので、
こういう動きの操体が生まれたのかなと思います。
◦この脹ら脛の筋肉は、
足の甲を反らさないで膝を曲げる時は緩んでいますが、
その状態から足の甲を反らせていくと緊張してくるのも
確かめられると思います。
■この操体操法は、
たいてい最初に膝裏を確かめてから行うなど、
他の操体とは違った面も沢山あって面白いし、また、
橋本敬三・翁先生が晩年一番良くやった操体だそうですので、
前から気になっていたのですが、
実際筋肉に触りながら操体操法して確かめてみると、
動きの操体の切っ掛けの原則に当てはまっている事が解りました。
•この点については、
『万病を治せる妙療法 操体法』のp69には、
爪先上げを
「農作業や山登りでヒフク筋が緊張して痛む時に」に用いる
として紹介しているので、
橋本敬三・翁先生も多分ご存じだったと思います。
◦直立2足歩行する人間に特殊な構造なのか、
犬など4足のほ乳類も同じなのかは、
まだ確かめていません。
■あと、鳥や恐竜はどうなっているのかも。
詳しい方がいたら、教えて下さい。
•また、
この脹ら脛の筋肉が縮む形で緊張し働く時には、
膝が曲がってくるようです。
◦しかも、
足先を伸ばしたまま膝を曲げる時には働かずに、
足の甲を反らした状態から膝を曲げる時に働いているようです。
■前に、
「仰向け膝立て爪先上げ」と同じ効果のある、
足首を反らした状態で膝を曲げていくという操体操法を紹介し、
そのやり方のほうが
膝裏の痼りが消える様子が確認し易いとも書きました。
■この場合には、
脹ら脛の筋肉は
縮んでいくほうの働き方をしている事になります。

いろいろ野次馬してみてください。 †
•この動きの操体の切っ掛けに関する自然則、
「痼りを目標にする時には、
 その痼りの在る筋肉を働かせ緊張させる動きや
 そういう動きに繋がる動きを
 操体操法の切っ掛けにする」
 という自然則を、
痼りを目標にするいろいろな定番の操体で試して
野次馬してみてください。
◦それ以外でも、
この痼りが取りたいなと思ったら、
その痼りの周りの筋肉を働かせ緊張させるような動きや
そういう動きを生み出すような連動を切っ掛けにする
操体を試してみると良いと思います。
◦また、
この筋肉に痼りがありそうだなと思ったら、
その筋肉を働かせ緊張させるような動きや
そういう動きを生み出すような連動を切っ掛けにする
操体を試してみてください。
■見た目に解りやすいので、先ずは
その筋肉を縮ませる動きを試すと良いと思います。
•定番の操体を始め、なにか
例外になりそうなものを見付けたらお知らせ下さい。

色々な例外と、その理由 †
•ただし、
先回と同じ様に必ずそうとは言えない場合もあります。
◦気になる筋肉を
働かせ緊張させる動きを切っ掛けにする操体で
必ず気持ち良さが出てくるとは限りません。
■逆に緩ませるほうの動き、つまり、
多くは反対側にある拮抗筋を
働かせ緊張させる動きが気持ちよい場合もあります。

心が痛いと思う痼りと体が治したい痼りが違うと †
•それは、
体が治したい痼りと
心が「ここら辺が痛いな」と想う痼りが
異なっている場合もあるからです。
◦例えば、
膝の痛みは、
お皿側に在ると想う事が多いですが、
原因となる痼りは、
膝裏側に在る事のほうが多いです。
◦同じ様に、
肩の痛みは、
肩関節の外側に在ると想う事が多いですが、
慢性の場合には、
原因となる痼りは
脇の下やその前後の水掻きに在る事のほうが多いです。
◦また、
腰や背中が痛いなと想った時に、
その痛みをもたらす痼りが
お腹側に在る事もあります。
■こういう場合に、
痛いなと想ったり違和感を訴えたりする側にも
痼りはありますが、
動きの操体をしてみると、
その周りの筋肉が緩んでいく動きが
気持ちよいと言われる場合が多くなります。

陰の側の痛みは、感じにくい、心に思いにくい †
•裏側、東洋医学の世界では「陰」の側と言いますが、
「陰」の側の痛みは感じ難いというか、
心に想い難いようで、
その表裏反対側の「陽」の側に痛みが在ると
想い易いようです。
◦押されて始めて、
摘まれて始めて痛みを感じるみたいで、
同じ強さで押したり摘んだりして
痛さを比べてみて初めて、
圧倒的に裏側のほうが痛いという事が解る
 という場合が多いです。
■特に、
受け手の方が表側の痛みを
「なんとなくその辺り全体が痛い」とか、
「もっとずっと奥のほうが痛い」とか、
「鈍い感じの痛み」とか
表現をされる場合には、
原因は裏側に在る事が多くなるようです。

猫背の方で反らすのが気持ちよい時には †
•少し複雑になりますが、そのまた逆というか、
一見猫背に見える方が
反らしたほうが気持ちよい場合もあります。
◦喘息や高血圧などの心肺系の疾患が在る場合には、
首の付け根から肩甲間部に痼りが出来て硬くなる
 事が多いですが、こういう方で
一見猫背に見える方がいます。
■この部分は「胸部後湾」と言って、
後ろ側に反っているのが自然ですが、
こういう方の場合には、
その部分の背骨の上にある筋肉が凝って硬くなったため、
その部分の背骨が引っ張られて、
その反りが少し少なくなっています。
■そして、
少なくなった反りを補うために、
その上下の背骨、
首の下のほうの背骨と肩胛骨の下の背骨が
余分に後ろに曲がっているために、
頭から腰まで全体としてみると
猫背に見えるようです。
◦猫背には見えますが、
一番硬く凝っているのは肩甲間部なので、
首の付け根から肩甲間部にかけてを反らしながら
上腕も後ろに引くような姿勢が
気持ちよい事が多くなります。

体が治したい痼りが別の場所にある時も例外 †
•また、
体が治したい痼りが全然違う場所にある場合にも、
とりあえず目標にした痼りの
周りの筋肉を働かせ緊張させる操体をしても
気持ち良さが出てこなかったり
息が深くならなかったりします。
◦受け手の方と対話しながら、
受け手の方の息の深さに注意しながら、
気持ちの良さが深くなる操体操法に誘導していってください。

先ず試してから、より気持よい操体を見付けていく †
•いろいろ例外はありますが、
目標の痼りがある時には、
その痼りの周りの筋肉を働かせ緊張させる動き、
中でも縮ませる動き先ず試してみると
気持ちよいと言われる可能性が高い
 という事は覚えて置くと役に立つと思います。
i.そういう事を先ず切っ掛けにして操体操法を始めて、
気持ち良さを探しながらゆっくり動いていってもらう
 とよいと思います。
ii.そして、
気持ち良さが出てきて
息が深くなるタワメの間が見つかったら、
そのタワメの間の姿勢から、
その時に体が治したがっている痼りを見付けて、
そこに手や指を当てて、
その痼りに対してカワの操体をしながら、
その痼りが変化していく様子を観察する
 と面白いと思います。

次回は、痼りとカワの操体の関係 †
•今回は、
痼りの周りの筋肉を働かせ緊張させる事を
切っ掛けにする動きの操体について書きました。
•次回は、
痼りとカワの操体の関係について書いていきます。

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