和方養生技術伝承塾~鍼灸・操体実践講座~ 急性期から慢性期まで患者さんが喜ぶ技術を伝承します

次の朝の寝覚めが爽やかか

はじめに †
•先回は、操体をした直後の判断で、表情が晴れ晴れしたかどうかが重要
という事を書きました。
•今回は、操体・鍼灸などで治療後から次の日の朝までに起こる毒物の排出現象
について書きます。

体が整うと、毒を排出しようとする †
•操体などをして、痼りが緩み全身のバランスが整うと、
体に溜まっていた不要で有害なものを排出しようという動きが出てくる事があります。
◦たいていは、操体などをした次の日の朝までに起こります。
■汗の他に、涙・鼻水・鼻血・下痢・下血・痰・大小便・嘔吐などの形を取ったり、
皮膚が赤くなったり熱が少し出る事もあります。
◦そうすると、体が一段とすっきり透明な感じになります。
◦それで、次の日、すっきり爽やかに寝覚める事が出来ます。

排出現象を気持ちよく感じられたか †
•排出のしかたが普段と違っていたり、熱が出たりして、
受け手の方がびっくりしないように、
◦体がすっきり透明な感じになったり、寝覚めが爽やかだったら、
体に有害なものが排泄された証拠ですから大丈夫です
  と伝えておいたほうが良いと思います。
◦それに、操体をして体に対する感受性が良くなった方は、
そういう排泄は気持ちよく感じる事が多いので、
説明しやすいです。
■特に、治療後の表情が晴れ晴れとした場合には、
そういう排泄を気持ちよく感じるようです。

頑張りすぎると、排出が気持ちよくなくなる †
•もし、そういう排泄現象を気持ちよく感じられなかったと言われたら、
ちょっと歪みを正す事に頑張りすぎた可能性があります。
◦次の機会には、歪みを正す事よりも、
操体の最中に気持ちよさを感じられる事のほうに注意を注ぐ工夫してみましょう。
◦この辺り面白いなと思うのですが、
体が不要になったものを一度に処理できないほど歪みを正そうと操体をしても、
体は気持ちよさを伴わない事が多いようです。
■この適量は、あくまで受け手の方の体が感じる気持ちよさで決まるので、
伝え手が思う適量と違うだけでなく、
受け手の方が思ったり言ったりする適量とも違う場合があります。
◦排泄現象が気持ちよくない時には、
受け手の方がもっとやって下さいというのを鵜呑みにしてやりすぎた
という場合もありますので、注意が必要です。
•受け手の方に操体をした次の日の朝の寝覚めが良かったかどうか聞いて、
その受け手の方の体のその時の適量を判断すると良いと思います。

最後に、手の指揉みすると良い †
•操体を気持ちよくしたり、適量に治める工夫をした上で、
操体操法の最後に、手の指揉みを強めにしておくと良いです。
◦手の指を1本づつ、手の甲に近いほうから、
a.指と指との間の水掻き、
b.指裏(手の平側)関節部の皺の横端、
c.爪の根本の順で揉みます。
■指を反らしてピリピリビリビリする指は、
特に念入りに揉んでおきます。
指揉みする時間が無い時には、
反らしてピリピリビリビリする指を少し反らしたままにしておく
だけでも効果が有ります。
•こうしておくと、
排泄現象が気持ちよく感じられる確率が高くなるようです。

漢方古方派の瞑眩 †
•この排泄現象は、漢方の人達が「瞑眩(めんげん)」と呼んでいる現象です。
◦詳しく書くと長くなりますので、
何故指揉みすると気持ちよく感じてもらいやすいか
の理由を説明できる範囲で簡単に解説します。

それなりのバランスと毒物 †
•江戸時代に古方派漢方を始めた吉益東洞は
「瞑眩せずんば癒えず」という言葉を残しています。
◦体の歪みが取れると、必ず何らかの排泄現象を伴うと考えたようです。
■体は、歪んでいる時にもそれなりにバランスを取っているので、
それなりに生活していけるわけですが、
そのそれなりのバランスを維持するための重りのような感じで
体の中に毒物を溜め込むのかなと私はイメージしました。
■体の歪みが取れてくると、
悪いなりのバランスを取るための重りとしての毒物はいらなくなるので、
排出しようとすると考えると解りやすかったです。

邪毒の種類 †
•古方派の方々は、この毒物を「邪毒」と呼び、
主なモノは「邪気」、「水毒」、「悪血」の3つだとしています。
•「水毒」は体液の悪化したモノ、
「悪血」は血液の悪化したモノで、
ともに、淀んで腐った水のような感じで、
老廃物や増殖した細菌やウイルスを含んでいるとされます。
◦また、ツボの上の皮膚が少しベタベタしているのは、
そこから水毒が常に少しずつ浸み出しているため
という考え方もあるようです。
•「邪気」は、手にピリピリビリビリした感じを受けるものの事のようで、
体に溜まった「邪毒」の中で
形が無く目に見えないもの
 をまとめてそう呼んでいるようです。
◦「邪気」は「水毒」や「悪血」から湧き出してくるとされ、また、
「邪気」が抜けると「水毒」や「悪血」の毒性が弱まり排出しやすくなる
 とされているようです。
■なんとなく、
腐った水からメタンガスが吹き出しているイメージだなと思いましたし、
手にピリピリビリビリ来る事から電気のような感じも受けます。
◦ガスのような性質があるのか、
湧き出した邪気は上、つまり、頭のほうへ動き、
上半身上部の症状、つまり、頭痛、発熱、めまい、吐き気などを
引き起こすともされているようです。
■そう言えば、電気にも空気にも「気」という言葉が入っています。
同じ様な性質があると昔の方が思ったので、
「気」という言葉が入っているのでしょう。
•ここで、「水毒」や「悪血」ならまだしも
「邪気」となると、そんなものあるわけないという方も多いと思います。
◦ただ、次のような観察から、
私は在ると考えても良いのではという立場に立っています。

邪気を体は感じている †
•ツボの出ている部分の10cm位上の空中を皮膚に平行に指先を動かすと、
ツボの真上で指を動かすスピードが変わったり、
指が皮膚から離れる方向に跳ねたりする現象が観察できます。
◦まず、一人の人に
前腕の手の平側を上に向けて水平に机の上などに置いてもらいます。
■前腕だとやりやすいからで、背中でもお腹でも同じ現象は起きます。
◦もう一人の人にその前腕の10cm上の空中を、
腕の中央付近に沿って肘から手首まで、
指を出来るだけ一定の速度でゆっくり動かしてもらいます。
■肘から手首まで1秒くらいかけて。
◦みんなで横から観察してみましょう。
所々で、少し指が上に跳ねたり、指を動かすスピードが変化したり
しているのが見えます。

•人を変えて実験してみても、
場所が少し違うことはあるけれど、同じように
上に跳ねたり、スピードが変化したりしていることが観察できます。
◦「私は邪気なんてわかりません。」という人でも、
指の動きは変化してています。
•そして、その跳ねたりした所の下の部分の腕を押してみると、
痛かったりして、いわゆるツボになっているのがわかります。
•この実験は、
参加する人に「邪気」の話とか、こういう結果になりますとか説明しないで、
手順だけ説明して行っても同じ結果になります。

ツボからは邪気が出ている †
•この観察から、私は、
ツボからは邪気が常に少し噴出している
 のではないかと考えました。頭で意識できなくても、
◦心で思えなくても、
指は嫌な感じを受けて避けるように動くようです。
•生物は、アメーバのような単細胞生物から進化しました。
◦特別な感覚器官は無いけれど、
好ましい物には近づき、嫌な物からは逃げられなければ、
生物として生き延びる事はできなかったはずです。
■人間の細胞一つ一つにも、そういう原始的能力が残っているのかも知れません。

最後に手の指揉みをする理由と利点 †
•さて、操体の話に戻ります。
•操法の最後に強めに手の指揉みをすると、
この邪気を指先から出せるようです。
◦邪気が出ていくため、指を反らすとピリピリビリビリするみたいです。
◦そのため、水毒や悪血の毒性が弱まり、
体の普通の排泄能力で出しやすくなり、
操体をした後の排泄現象が気持ちよく感じられ易くなるようです。
■「体の自然」編で書いたように、
手の甲側は肩胛骨・鎖骨から上、
手のひら側は横隔膜から上の体の内側と関係が深く、
手首・足首から先は急性症状に向いているので、
頭のほうへ向かって動いた「邪気」を手の指を揉む事で治める事が出来るようです。
•治療や講習会の後、電話で頭が痛くなったなどと相談された場合に
受け手の方にやってもらう事も出来ますので、覚えて置いてください。
◦もし、指揉みが巧く伝わりそうになかったら、
「手の指を反らして一番ピリピリビリビリする指を
 しばらく反らしたままにしておいてください。
 ピリピリビリビリが少なくなるまで」と伝えればよいでしょう。
•この方法は、
免疫学者・安保徹(あぼとおる)先生によって有名になった、
指の爪の根本のツボ(井穴)の刺絡(注射針で刺して血を一滴流す)や
そのツボの指揉みと同じ効果の有る方法で、
より行いやすく効果も出しやすいやり方です。
•前に、操体掲示板で、髪の毛を引っ張ると言う方法が紹介されました。
その方法でも頭のほうから「邪気」は出ていくようです。
◦ただ、髪の毛を引っ張ると、
たまに「余計頭が痛くなった」という方もいますので、
そういう時は中止したほうが良いでしょう。
■邪気は刺激を与えたほうに行く性質が有り、
髪の毛を引っ張るとそこから抜けても行きますが、
うまく止めないと次の邪気を頭に呼び込むことにもなるためと思われます。
◦髪の毛をひっぱるのに比べると指揉みのほうが頭の痛くなる確率は低いようです。
■操体をしている方なら、
患者さんの気持ちよさを聞きながら実行すると思いますので、
心配するような事は無いと思いますが。

鍼灸においては、 †
•手の指揉みの代わりに
◦鍼では、頭の散鍼をしてから、手の甲に引き鍼をします。
◦灸では、手の指の骨空や指端に直接灸をします。
■「鍼は引き鍼」「運動器系応急処置」の
陰経も使う五十肩」の「後始末」、「手足の甲のツボと運動鍼」の「手の甲への引き鍼」
を参考にしてください。

次回は †
•今回は、
治療後から次の日の朝までに起こる毒物の排出現象
について書きました。
•次回は、慢性期の養生指導についてです。

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