和方養生技術伝承塾~鍼灸・操体実践講座~ 急性期から慢性期まで患者さんが喜ぶ技術を伝承します

手足に引く、陽に引く、下に引く

邪気を体の外に出すには †
• さて、
邪気に頭を衝(つ)かせないように
邪気を体の外に誘導するのが刺法の基本
 だと書きましたが、
そのためには、どういうふうにしていけばよいかを書いていきます。

手足に引く、陽に引く、下に引く、これが三原則 †
•手足に引き、陽に引き、下に引く、この三つが刺法の三原則です。
◦手足、陽に引くのは邪気を体の外に出すため、
下に引くのは頭を衝(つ)かせないためです。

手足に引く †
•手足に引くには、手足の経絡と頭や体幹部の相関を考えます。
◦「経絡の本は手足」という言葉を思い出してください。
•肘・膝からさきをさがすのが基本です。
◦ですから、
経絡の要穴というのは、基本的に肘膝からさきに多いわけです。
■とくに、
頭首胴の急性症は、手首・足首よりさきをさがすのが基本で、
手足の甲や井穴などの指のツボが使われます。
■まえに書いた頭のハチマキするあたりの熱を手の甲に引くのが典型例です。

陽に引く †
•陽に引くというのは、より陽位に引くという意味で、
腹など陰位の邪気を背中側などの陽位に引き出すことが典型例で、
あとは、陰経の邪気を陽経側に引くということもあります。
◦古い五十肩や膝痛のときに、
脇の下や膝裏の邪気を表側に誘導するのも、
陽に引く例かなと思います。
◦また、腹が痛いときにする胃の六灸のツボを使う灸も「陽に引く」例です。

下に引く †
•下に引くのは、基本的には
座位や立位で地面に近いほうに引くということで、
手足甲に引くのが基本です。
◦邪気に頭を衝(つ)かせないためにおこなわれます。
■前準備のときと後始末のときにおこないます。

陰経は徐刺徐抜、陽経は速刺徐抜 †
 さて、今度は、どういう刺し方で邪気を引くかです。


陰経は除刺徐抜 †
•陰経の刺し方の基本は、
ゆっくりと刺し、ひそかに邪気をさそい、
来終わったら静かに抜くというものです。
◦徐刺徐抜とよばれ、まだ動きの遅い邪を引くのに向いています。
■これは、激しい急性症状をのぞいては、
陰経側のほうが邪気の動きが遅いことが多いためです。
◦邪気をさそう感じは、
魚釣りでコマセをまいたり、
エサを食いかけた魚をあわせたりする感じに似ています。
◦激しい急性症状のときで、
陰経側にもたくさん邪気がすでに来ている場合には、
つぎに書く陽経のような刺し方のほうがよい場合もあります。

陽経は速刺徐抜 †
•陽経の刺し方の基本は、
スッと邪にあてて引っかけ、
途切れないようにスーーーッと抜くというものです。
◦速刺除抜とよばれ、動きの速い邪を引くのに向きます。
■陽経側はもうすでに邪気が動いていることが多いので、
その邪気をすばやくとらえ引き出しはじめます。
◦あまり速く抜きすぎると
せっかく来ている邪気をすべて引き出せずに終わることがあります。
■魚釣りでバラした、つまり釣り糸を切られて逃げられた感じです。
夜店のヨーヨー釣りみたいな感じもします。
速く引きすぎるとヨーヨーは落ちてしまいますね。
ですから、来ている邪気を根こそぎ抜き出す感じで、
途切れないように、抜きながら横ゆらしなどの手技をしながら、
引き出してきます。

陽は横切り、はじめとおわりで下に引く †

陽に引くには横輪切りを使う †
•陽に引く刺法では、
体の横輪切りラインにツボをさがし、
そちらに引くようにするのが基本です。
◦背部愈穴に腹の症状を引くのが代表例です。
■あとに書くように、陽→陰→陽の順を取ることが多くなります。
◦刺法の速さ(徐刺徐抜か速刺徐抜か)は、
邪の動きの速さをみて決めます。
■慢性期や症状がおちついているときには遅く、
激しい急性期には速いことが多いです。
◦陰経側の邪気を陽経側に引いてくるときもほぼ同じです。

はじめとおわりに下に引く †
•そして、はじめとおわりに下に引きます。
◦鍼での治療の最初と最後に下に引く、
つまり手足の甲の陽経側で終えるということです。
◦下に引くときは、おもに速刺除抜を使います。
■下に引くのは、基本的に
邪気に頭を衝(つ)かせないためにすることだからです。

出ているツボに引く †
•引くべき場所は、ツボが出ているところを選びます。
◦ツボが出ていない場所に刺しても邪気は引けませんので。
•つまり、ツボというのは、
出やすい場所はあるにしても、体の場所のことではなくて、
雲や低気圧のように体の状態のことです。
•ツボの出ているところは、
経絡上に指をすべらして止まるところにとります。
◦くわしくは、
「体は自然・ツボ付近の状態、ツボの探し方」を参照してください。
•かんたんに復習しますと、
表面は力なくベコベコして、
すこしベタベタ湿っていて、
すこし黒ずんでいることが多いです。
◦邪毒が水毒の形ですこしづつ漏れ出ているためと考えられます。
■敏感な方なら、手をかざせば
ピリピリビリビリしたイヤな感じを受けるでしょう。
•教科書に書いてあるとおりにとっても、
その場所にそのときツボが出ていなければ刺しても効きませんので
注意してください。
◦そのときの皮膚や筋肉の状態を目で見て手でさわって確かめて、
出ているツボをピンポイントで取れるように練習しましょう。

刺鍼の深さ †
•刺鍼する深さは、邪気が動く深さです。
◦浅すぎても深すぎてもダメです。
■接触鍼で充分なこともありますし、
2寸5分でやっと届くこともあります。
•どの深さで邪気が動くかは、
手にピリピリビリビリ感じることのほかに、
鍼先につきたてのモチを刺したようなネバネバした感じを受けたりすることや、
受け手の方のおなかに息が深くはいったり、
おなかが鳴ったりすることも目安になりますし、
手の甲への刺鍼などでは受け手の方の瞬き(まばたき)なども目安になります。
◦そういうふうに患者さんの体が反応したら、
深さを変えずに旋撚、横ゆらし、弾鍼、雀啄などの刺鍼術をして、
邪気をその場所から逃がし、体の外へ引き出すようにします。
■どの刺鍼術を使うかは、
いちばん邪気を動かしやすいものをえらんでいくようにします。

虚のツボの刺し方 †
•虚のツボでズーっとフニャフニャで
トウフに刺したときのように抵抗感がなく
スーッと鍼がはいっていくときには、
とつぜん底の硬いシコりにぶち当てて
患者さんにつらい思いをさせないように、
一歩手前で止められるようにしましょう。
◦鍼先になんとなくネバネバしたような気配を感じたら
鍼をいれるスピードを落とすか、
いったん鍼を止めるとよいです。
•また、虚のツボの底の硬いシコりにぶち当たっても
患者さんの体の反応が出てこないこともあります。
◦そういうときには、
その硬いシコりにすこし鍼先を入れ込むつもりで
旋撚、横揺らし、雀啄などの刺鍼術をしていると
邪気が動きだしたり、おなかに息が深くはいりだしたりという
受け手の方の体の反応が出てくることが多いです。
■そういう場合には、
それから動き出した邪気を体の外に引き出すようにしていきます。
■邪気の動きが感じられないときには、
おなかの息が普通にもどるまで、旋撚、横揺らしなどの刺鍼術をします。

邪気の動く深さが数カ所の場合 †
•腰、首、大腿など筋肉が厚いところでは、
邪気が動く深さが数カ所あることもあります。
◦こういうところでは上から順番にしていきますが、
ずべてのところを一度に動かす必要のない場合もありますし、
二つ以上動かしたら動かしすぎの場合もあります。
■受け手の方の体の状態をみながら、
その日そのときの全体の刺鍼を考え合わせ、
適切になるようにします。

抜鍼時に抜けにくくなったら †
•虚のツボでは、
ずーっと奥の深いところの硬いシコリをゆるめたあとで抜いてくるときに、
行きにスーッと素通りしたところで
鍼がはさまれたように抜けてこなくなることがあります。
◦そういう筋肉のぶ厚いところではツボはだんだん深くなりますので、
そういう帰りに抜けなくなるところは
むかしツボの底だったと考えています。
■つまり、
現在のツボのいちばん底の硬さを緩めたときに逃げた邪気が
むかしツボの底だったところにたまったことが原因で
硬くなり鍼をはさんでいると考えています。
•そういうところを無理して抜くと痛がられますので、
抜く方向に引っぱりながら横揺らし、弾鍼などの刺鍼術をしばらくして
邪気をその硬い場所から逃がし体の外へ出すようにすると、
抜けてきます。
◦ツボが深かった場合には数回くりかえすこともあります。
■こういう場合には雀啄の刺鍼術は使えません。
鍼先の方向に硬い部分はないからです。
雀啄は鍼先より奥に硬い部分があるときに有効な技法だと思います。

鍼先がツボの底に届かないとき †
•ツボが深くてツボの底に鍼先が届かないときには、
回旋術をすると奥の底のほうに効果を出せることがあります。
◦回旋術は片方に目一杯ねじってからパッとはなす技です。
■螺旋的に筋肉を巻き込むので
奥のほうに刺激をあたえられるせいかなと思います。

熱と寒、スジバリへの刺法と灸 †

熱に対する刺法 †
•熱には、てばやく散鍼して散らします。
◦速刺速抜とよばれる刺鍼術です。
■遅いと邪を引き、かえって熱くするので注意が必要です。
■また、置くほうよりも離すほうを速くするのがコツです。
置くほうが速くて離すほうが遅いと、痛いだけで冷めません。
小指側、小指丘などで
鍼をもつ親指・人差し指側を跳ねあげるようにすると、
すばやく離すことができます。
•カゼなどのときの頭首肩など表位の熱は、
手甲に引くこともできます。
◦頭のハチマキするあたりをさわって
熱いところと経絡的に関連する手甲のツボに引きます。
■こういう場合には、
邪気もとても熱い感じで動きもふだんよりもずっと速いので、
すばやくとらえ抜きながら横揺らしや弾鍼などの刺鍼術をして、
根こそぎ外に出すようにします。
•内科系急性期などで、頭など表位の熱感がはげしい場合には、
頭などに散鍼する前に、手の甲へ引いておいたほうがよい場合が多いです。

寒に対する刺法 †
•寒には、置鍼して真気をよんで温めます。
◦ただし、江戸期を中心に発達した古方では、
押し手は離しません。
■昭和10年代までの鍼は基本的にそういうものだったようです。
◦じっくり置鍼しながら
状態にあわせてかるく旋撚、横ゆらしなどの刺鍼術をまぜ、
押し手に温かさを感じるまで置鍼します。

スジバリへの刺法 †
•コワバリのなかやフニャフニャしたなかに
ギターの弦を太くしたようなスジバリが
みつかることがあります。
◦筋肉を横に横断してみるとわかりやすいです。
•そういうときは、
そのスジバリに鍼先をチョンと当ててゆるめます。
◦スジバリが横に逃げて当たらないことが多いので、
逃げないように押し手でスジバリの両側をおさえてしまうと
当てやすいです。
■つまり、
スジバリの両側に押し手の指先がくるように押し手を作り、
45°くらいの斜刺で刺鍼していくと当てやすいです。

脇の下ちかくの水掻きの中のシコリへの刺法 †
•脇の下前後の水掻き状に筋肉がはった部分の中にあるシコリは
上から押し手を作って刺鍼していっても
逃げてしまって刺さらないことが多いです。
◦こういう場合には、
中指を水掻き状に張った部分の反対側に回し、
押し手の親指と人指し指の組み合わせと協力して、
シコリを3本の指でしっかりつかまえてから、
中指に向かって刺鍼していくと、
シコリに鍼が刺さりゆるめることができます。

灸のほうが良い場合 †
•ヘコんで見え、さわって力なくペコペコして
冷たいところには、灸をします。
◦とくに冷えてできたツボには刺鍼よりも効果が高いです。
■そういうツボは、
おなかや下腿の陰経側、とくに足首よりさきに多いです。
•また、手のひら、足の裏や手足の指は、
刺鍼の痛みを感じることが多いので鍼をしないで
灸することが多くなります。

灸での全身治療 †
•灸だけで体全体を治療することもあります。
◦灸の場合は、陽先陰後といって、
体の陽にあたる背中側や頭のほうを先にします。
■手順としては、
座位、うつ伏せ、仰向けの順で、
頭のほうから足指のほうへというのが基本になります。
◦ただ、このごろは、
灸したあとに直ぐ立ち上がって帰っていただくことが多いので、
クラクラフラフラしないように、
おわりに手の指のツボ、
指端や骨空などに糸状灸をしておくと良いです。
■パチッと目が覚め、
立ち上がったときにクラクラフラフラしなくなります。
■灸のあとのほんわかとした余韻は消えてしまいますが。

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